<トルドー首相はサミットではおとなしかったのに、私がいなくなった後に「米国の関税は侮辱的だ」という。非常に不誠実で弱虫だ!>トランプ大統領はG7のホスト役だったカナダのトルドー首相を激しく非難、難産の末やっとまとまったG7の共同声明<保護主義と戦う>との宣言を了承しないと表明しました。一度出した共同声明を否定するのも異例ですが、一国の首相に対してこれだけ激しい口調でののしるのも異様です。今回のG7はG6プラス1と評されるほど米国と他の6ヶ国との亀裂が鮮明になりました。本来は自由主義陣営の先進国の協調を謳う場であるG7が、参加国の分裂を世界に見せつける悲惨な会合となってしまったのです。
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目次
米国第一主義のトランプ大統領を誰も止められない?
とにかく米国第一主義のトランプ大統領を誰も止められないのです。トランプ氏は思うがままに、<米国の利益を守るため>と強引に自己主張を押し付けてきます。そのバックには世界一の経済軍事大国で膨大な輸入を行っているという事実があり、そしてドルという世界の通貨を牛耳っている圧倒的な強みを武器にしているからたまりません。どの国も表面上はトランプ氏に反対意見を述べるわけですが、トランプ氏の強烈な逆襲に押されてしまいます。どの国も米国という世界一の大国と本気で喧嘩はしたくないのです。米国と本気で対立すればどんな国であっても自らの犠牲の方が大きいのは明らかだからです。
G7の初日、討議は貿易問題でしたが、当然米国を除く各国は米国の強引な関税引き上げ方針に対して非難を浴びせました。ここまで世界経済が繁栄してきたのは、まさに米国が作り上げてきたWTOをはじめとする国際的な貿易のルールです。そのルールを守ることによって世界の貿易は活発化して、多くの国が潤って、ひいては世界経済がたゆまない発展を続けるようになっていったのです。その基本的な貿易ルールをそれを作ったもとの米国が自ら破ろうとしているのですから、各国が峻烈な意見を言うのも当然でしょう。
<安全保障の脅威になる>という理由を持ち出して、どの国に対してもあたりかまわず高関税を課してくるのですから、貿易相手国はたまりません。米国が中国やロシア、イランなど仮想敵国に対して安全保障の脅威というのならわかりますが、自由陣営で同盟国であるG7各国に対して安全保障の脅威という名目で関税を課すのは常軌を逸しています。強引な自己主張をごり押しするための方便にしか過ぎません。かような貿易秩序を壊すような行動は、今まで世界の貿易システムをリードしてきた世界のリーダーである米国が取るべき道ではないし、本来率先してルールを守るように他国に働きかけるのが世界一の大国である米国の取るべき行動です。ところがトランプ氏は全く逆で自ら世界貿易のルールを壊して、自国の圧倒的な強さを利用して、2国間協定で貿易問題で有利に立とうとしているのですから、他の国はたまりません。しかも国際会議やマスコミに向かってトランプ氏の手法に対して意見する正論を主張すれば、トランプ氏から激しい反論を喰らい、世界にその無様な姿が晒されるわけです。
G7の初日の会議においても米国の鉄鋼、アルミの関税を各国から非難されたトランプ氏は激高して<それなら関税を全てゼロにしよう。それでどうだ!>を興奮気味にまくしたてたというのです。これはもう議論になっていませんし、世界の先進国であるG7の首脳の話すべき論点ではありません。トランプ氏の<関税をゼロでどうだ>などという言動は道端やその辺の飲み屋で行われるような議論です。WTOは米国が中心に作った国際的な貿易ルールですし、そのWTOにおいては重要品目の関税は公に認められているものです、日本のコメとか、各国の乳製品など自国の重要品目に関税を課けるのは普通のことです。ところが米国は安全保障の脅威という無理な理屈をつけて、鉄鋼、アルミの関税をルール無視して課してきたのです、これが米国の身勝手な手法であることは明らかです。
トランプ氏はロシアをG7に復帰させるように提案?
更にトランプ氏はロシアをG7に復帰させるように提案を行ってきたのです。ロシアはクリミアを国際的な常識を無視して併合、更にウクライナには軍隊を堂々と送っています。ロシアへの制裁はかつて米国が中心となって行ってきたわけで、その当時と状況は全く変わっていないのです。そのような現状をみてもトランプ氏は関係ないとばかり、ロシアをG7に復帰させようというのは、G7の議論を貿易問題から目をそらし、会議を紛糾させる目的としか思えません。かように今回のG7においては過去になかったような分裂劇となったわけで、その主役は例によってトランプ氏でした。
トランプ氏は北朝鮮の金正恩とは良好な関係を築いたようですが、肝心の同盟国であるG7各国とは亀裂が深まるばかりです。同盟国とは仲良くして敵国には厳しく当たるべきですが、トランプ氏には常識が通用しません。
そもそもトランプ氏が貿易問題で不公平感や不満感を抱いているのは事実でしょう。トランプ氏は保護主義を否定していません。昨年のG7サミットでも共同宣言の作成で<保護主義と戦う>という文言を入れるか入れないかで、トランプ氏の大反対にあって大紛糾しました。最終的にトランプ氏は<不公正貿易に対抗する>という文言を入れることで<保護主義と戦う>という文言を入れることを受け入れたのです。
トランプ氏は中間選挙を前にして、とにかく米国の有権者の支持を拡大させたいのです。世界の繁栄とか、世界のあるべき姿などトランプ氏にとっては関係ありません。まずは米国第一主義の下、米国の有権者に受けるかどうかが大事なのです。G7でもトランプ氏は世界の貿易システムは公正ではないとして、<現在の世界の貿易システムは米経済、労働者、中産階級に不利に働いている>と不満を露呈しています。一般的に考えれば貿易を活性化して、国内の産業を強くして、競争力を持つようにして、国の生産性を上げて、ひいては世界全体が富むような方向に持っていくべきというのが当たり前でしょう。弱い産業は残念ながら淘汰されていきますが、それが産業の新陳代謝を促して経済を活性化させるようになるわけです。そういう意味では貿易を盛んにしてどの国も国を開いてグローバル化していくのが世界が発展成長していくための正しい手法です。世界経済は貿易システムの拡大と共に益々活性化してきたわけです。
厳しくても<グローバル化>こそが、各々の国も世界全体を見渡しても発展していくキーなわけです。鎖国状態の国が発展できるはずがありません。かつての日本の江戸時代や現在の北朝鮮のようなものです。かような世界が発展するために、ひいては何処の国の国民も最終的には発展するための当たり前の手法が<グローバル化>の選択であるわけです。
ところがかような考えは実は識者や、いわゆる勝ち組の考えに過ぎないのかもしれません。<グローバル化>は光もありますが、影もあります。現に米国ではラストベルトと呼ばれる中部の工業地帯の労働者は自動車産業で敗者となって多くの職を失ってしまいました。彼らにとって<グローバル化>は決していいことではありませんでした。<グローバル化>は彼らを間違いなく貧しくしてしまって、仕事を失わせて人間としての誇りも奪ってしまったのです。イタリアの新政権は移民受け入れを拒否しています、イタリアの経済が厳しいのは移民を受け入れているからではないでしょう。しかし仕事を失った人々にとっては博愛主義の下、無尽蔵に移民を受け入れる、まさに<グローバル>な政府は自分たちの敵でしかありません。ですからイタリアでは移民受け入れを拒否する極右政党の<同盟>が広い支持を受けるようになったわけです。イギリスのブレグジットの選択も同じことでしょう。多くの国民が<グローバル化>を否定しています。グローバル化か、反グローバル化か、かように世界中で人々が分断されています。当たり前のように思われる<グローバル化>の波はあらゆるところで勝者、敗者を生み出しています。<グローバル化>は世界中で深刻な対立を生み出してきているのです。
そして今、米国でその<グローバル化>を敵視して激しく反対し続ける層がトランプ氏の熱狂的な支持者なわけです。一般的に考えればトランプ氏はその特異なキャラクターから、とんでもない人が大統領になってしまった、と考えがちですが、実際は彼の支持者、激しい<反グローバル>、そして自分たちの利益をまず一番に考える、まさに米国第一主義への強い願望がトランプ大統領を生み出してきているわけです。トランプ氏は彼らの思いの代弁者であって、これこそが現在の世界を強力に動かしつつある人々の強烈な意識です。そしてトランプ氏は米国と言う最も強力な国家の力を使って<米国の利益を第一番に考えていく>という自らの主張を強引に推し進める体制を作り上げようとしているわけです。そして実は、それが功を奏しようとしているわけです。
米国は国際的な貿易ルールであるWTOのルールなど従いたくない
米国が自らの主張を通そうとすれば、自分が世界一の大国なわけですから、その力を持って相手国をねじ伏せる方が自国にとって有利な取引を行えるのは当然です。ですから米国は国際的な貿易ルールであるWTOのルールなど従いたくないのです。自らの力を背景に自らの主張を押し通していった方が自分の思い通りに物事が進むわけです。G7のような国際協調などトランプ政権の望むところではありません。米国にとっては国と国との関係は2国間で決めるべきであって国際的な取り決めなど行わない方がいいのです。ですからトランプ氏は徹底的にG7を無視しコケにしたのです。普通に考えると40年も歴史があるG7がかように分裂気味になったのはトランプ氏という強烈な個性を持った政治家が現れたから、起こった一時的な現象と思うかもしれませんが、おそらくそうではないでしょう。歴史の大きな動きの中で国際的な協調が弱くなっていって、どの国家や国も余裕がなく自分第一に考えるしかないようです。今後国際的なルールは軽視され、国際関係や貿易ルールは2国間や地域間でまとまるような情勢になっていくように思えます。
G7に対抗して上海協力機構(SCO)が開催されました。中国、ロシア、インド、イランなどが主要な参加国です。中国の習近平国家主席は<WTOを核心として多国的貿易体制を強固に発展させる>と自由貿易を主張、加盟国間の協力を謳っています。ニュースを見ると分裂したG7と結束する上海協力機構のコントラストが鮮明です。これだけ見ればG7と違って中国とロシア、インドなどは結束を深めているようなイメージが沸いてきます。しかし基本的に上海協力機構などG7に対抗しているだけの、張りぼての組織にしか過ぎません。中国は自由貿易を謳っていますが、国家が強力に経済に介入し続けています。ロシアも同じように国家主導の経済です。彼らが自由貿易推進とスローガンを出すのはプロパガンダに過ぎません。実質が全く伴っていませんし、インドや中国など実際は犬猿の仲です。ロシアも米国との対抗上、中国に接近しているだけで、中露がお互い自由貿易などと恥ずかしくもなく主張するのはうわべだけで、まさに虚構の物語です。
かように考えると上海協力機構など国際的なルールとして実質機能するとも思えませんし、一方G7は時代の流れの中で役割を終えつつあるのかもしれません。いずれにしても多国間の協定なりルールなりは今後国際貿易の中で有名無実化してくる可能性が否定できません。
まさに米国が1強で米国の思い通りに事が進みつつあるのが実情です。多国間の取り決めが効力を失いつつあり、2国間で、あるいは地域のみで協定が効力を発揮する方向に動きつつあるようです。トランプ政権は世界中の非難を浴びながら実は巧みに各々の国との貿易協定をまとめるようとしています、トランプ政権の強引な手法は世界経済の先行きに不安感を与えているものの、米国だけはどこ吹く風で、景気が良く、金利は順調に上げつつあり、株は世界を見渡しても米国株だけ突出して上がり続け、まさに米国1強の世界が誕生しつつあります。
貿易交渉で真っ先に米国に屈したのは韓国でした。韓国は米国との交渉において、貿易の数量規制をいち早く受け入れたのです。これによって韓国は米国からの鉄鋼とアルミの関税を免れたのです。数量規制は関税よりも強く貿易を制限します、それでも韓国は米国との2国間交渉で米国の条件を丸のみし不利な条件を受け入れてしまったのです。この数量規制は要求する方も受け入れる方もWTO違反なのです。WTOという貿易の国際ルールなど完全に無視されて米国、韓国という世界貿易の雄が協定を結んでしまったわけです。これが現実で今後日本は米国から相当強く2国間交渉を求められるのは必至です。
トランプ政権の強引な手法が功を奏して米国だけは潤い、他の国は失速するという二極化、混乱が世界を覆おうとしています。米国は失業率が3.8%と18年ぶりの低水準にまで低下してきたのです。FRBは年内にも失業率は3.6%にまで低下すると予想しています。賃金は前年同月比2.7%増とじわりと伸びてきています。FRBは12日、13日と開かれたFOMCにおいて年内計4回の利上げを行うことを示唆しています。米国経済は極めて順調なのです。そしてその順調な経済と上がり続ける金利をみて、米国には世界中の資金が集まりつつあるのです。5月の米上場投資信託(ETF)の資金流入額は約263億ドル(約2兆9000億円)と4月に比べ6倍もの額が流入されるようになってきました。一方で新興国からの資金流出が止りません。5月は新興国の債券、株式市場から約123億ドル(約1兆3500億円)の資金流出となりました。2016年11月以来の巨額の流出です。
かような米国への資金流入、新興国からの資金流出は今後更に激しくなっていく可能性も否定できません。トルコは6月7日、政策金利を16.5%から17.5%にまで引き上げました。インドネシアは5月30日、政策金利を0.25%引き上げて4.75%にすると発表しました。アルゼンチンは5月に政策金利を40%にまで引き上げました。とにかく新興国からの資金流出が止らないのです。資金流出を止めるためには金利を引き上げて通貨防衛する必要がありますが、金利引き上げも際限なくできるわけもなく限界があるわけです。このまま米国経済が一人勝ちになって金利が更に上がっていけば益々米国への資金流入は増加していくでしょう。
残念ながら米国第一主義はトランプ氏という強力な大統領の下、機能してきたようです。米国1強の世界が訪れています、中間選挙を前にトランプ氏の支持率は徐々に上昇してきています。<どの国も自国のことを第一に考えるべきだ>トランプ氏の発言が通用し機能するのは米国だけです。しかしそれに伴う米国の強引な手法によって他の国は苦しみ、圧力を受け、不利な貿易を強いられ、苦境に陥るかもしれません。結果世界全体の経済は低迷に向かう可能性が否定できないのです。












