いよいよ日本株も暑いサマーラリーが始まりそうです。今年の日本の株式市場は期待された前半戦は惨憺たる流れで、米国トランプ政権による極端な保護主義政策によって世界は混乱、現在でも世界景気の先行きは見通せず、普通に考えれば投資を積極的に行える環境下ではありません。そんな中、米国市場だけは堅調で、ナスダック市場は史上最高値を連日更新している状態です。しかも貿易戦争の懸念で新興国はじめ世界の市場は株式も為替も波乱気味で、特に新興国からは資金逃避が起こってきています。米国トランプ政権は世界全体に対して例外なく貿易戦争を仕掛けていますので、どうしても株も為替も波乱が絶えません。特に新興国市場では一部大きな混乱が生じてきています。またトランプ政権の一番のターゲットとなっている中国市場も先行き懸念が限りなく広がって、株価も為替も下落基調です。中国経済が失速すると世界経済に対してのインパクトは強烈ですから、余計に世界の投資家心理は縮んでしまいます。

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日本株はじわじわ上昇?

 世界中で安心して投資するところがないとなれば、勢いどうしても比較上、相対的に安全なところに資金が集まっていくのは当然でしょう。それは米国市場であり、中でもIT関連大手が主導するナスダック市場です。製造業と違ってIT関連は貿易で大きな影響を受けませんし、米国経済自体は世界景気の影響を大きく受けるというよりは、減税や株高、財政出動の恩恵を受けて世界で唯一好調なわけです。IT大手5社を筆頭にナスダック市場は世界の不安定な市場をしり目に盛り上がる一方です。フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、など新値街道をばく進中です。

 かような中、日本株の動きや円相場の動きがここにきて変化してきました。一般的に考えれば、米国を除いては貿易問題の影響も大きいので、とても株式市場など積極的に買っていけない状況と思われますが、それでも日本株と円相場の現実の動きは何かの変化が出てきたように思えます。何故かような中、日本株はじわじわ上昇してきたのでしょうか? 

 昨今の動きをみると日本株は長い低迷から脱し上昇基調に入ってきたと思われます、今後も中間選挙に向けてのトランプ政権の強硬姿勢は変わらず、世界を覆う不安定な外部要因は消えるとは思いませんが、それらを押し切って日本株は上昇していくように思えるのです。

 まずは今年の日本株市場をふり返ってみましょう。日本株は1月下旬までは好調でした。世界の株式市場も同じく1月末までは好調でした、それが米国での長期金利上昇、更にはトランプ政権による貿易交渉の強硬姿勢の始まりによって先行き不透明となって2月初旬には急落することとなったのです。

 日本株の高値をみると日経平均とTOPIXは1月23日、ジャスダック市場は1月26日、マザーズ市場は1月24日、と高値が1月下旬に集中しています。昨年からこの時点までは日本株全体基本的に一本調子で上げてきたので、投資家心理も明るく、投資マインドは盛り上がっていました。この1月下旬の時点では日本株には投資家の積極的な買いが広範囲に入っていたのです。

 ここでの信用取引も活発で、信用取引の買い残高も3兆3000億円を超えていました。この高値の時点における信用取引での買付きも多かったと思われます。信用取引の決済期日は普通6ヶ月となりますので、今年は1月高値ですから、この7月は信用取引を使って高値で買ってしまった投資家の決済期日がまとまってきているわけです。1月下旬から一気に相場が下がったことを考えますと、多くの投資家は売り時期を逸して買った株をここまで保有しているケースも多いでしょう。これが市場の売り圧迫要因となり、相場上昇の大きな壁となって頭を重くしています、かような中投資家は決済を迫られているのです。

 今年の場合2月になってから相場が急落した後は、日本の投資家も外国人投資家も投資スタンスを大きく変化させました。何しろトランプ政権の行う激しい貿易戦争の行方は全く見通せないわけなのです。世界の貿易は経済全体に大きな影響をもたらします。貿易戦争の行方が見通せなければ、経済の先行きを予想することもできず、楽観して投資するのも難しいわけです。ですから一般的に日本の株式市場の帰趨を決めてくるのは外国人投資家の動向なのですが、この外国人投資家の売買が1月下旬以降大きく売りに傾いてきてしまいました。これでは外国人投資家頼みの日本株は上がれません。1月下旬から日本株を売り始めた外国人投資家は執拗に日本株を売り続けたのです。その額は現物と先物合わせて膨大な額となりました。外国人投資家は何と1月から6月まで、累計で7兆7000億円というかつてない巨額の日本株売り越しとなったのです。

2013年を通じた外国人投資家の日本株の買い付け額は約15兆円

 2013年アベノミクスが始まって日本株は大きく上昇、日本株は2012年11月から2013年5月までで日経平均8000円から15900円まで約7ヶ月で倍近い上昇となったのです。この2013年を通じた外国人投資家の日本株の買い付け額は約15兆円に及びました。これが原動力で日本株は大きく飛躍したのです。今年の売り越し額は1月から6月までの半期で7兆7000億円ですからちょうど2013年の膨大な買いの逆で、怒涛の売りとなっています。通常であれば日本株は大暴落してもおかしくないほどの外国人投資家の激しい売りに見舞われていたのです。

 それでいて日経平均は現在でも22000円台をキープしているのですから、非常に底堅いと言えるでしょう。これはいくつかの理由がありますが、まずは日本企業の業績は毎年最高益を出し続けるほどで、2013年の頃とは比較にならないほど高収益になっているのです。ですから株価が居所を変えて当時より大きく上昇しているのは当然です。1株利益も配当も全く違います。株価を計る最もポピュラーな指標であるPERでみても13倍程度で日本株は極めて割安なのです。因みに日本株のPERはアベノミクスが始まってから概ね14倍から16倍程度で推移、また1980年代後半のバブル期や2000年初頭のインターネットバブル期は80倍近かったのです。こう見ると現在の日本株は極めて割安なのです。

 通常、株価を考える場合、先行きを考えて投資しますので、今回のように貿易戦争で先行きが見えず、今月末から始まる日米の貿易交渉で自動車問題の決着がどのようになるか読めないという不安定な状況ですから、投資しないで様子を見ることが肝要と思えます。ないしは売っておいて現金化して様子を見るということです。ところがかような考えや慎重な投資手法は皆が考えることですから、多くの投資家が同じように投資を手控えている状態となります。結果的に売る投資家が多く買う投資家が少なくなります、これを受け株価が決まりますから割安状態となるわけです。現在の株価自体が多くの投資家の懸念を既に織り込んでいる株価であるというわけです。

 そしてかような様子見姿勢や、投資に対しての委縮した態度は多くの日本人投資家や機関投資家も同じような気持ちなのです。ですから誰もが積極的に投資していません。それが証拠に今年1-6月の日本株の売買高は記録的な少なさとなっているのです。今年1-6月の日本株の売買高は1日当たり15億株強と前年同期比で2割も減少、年前半の売買高としては2004年以来何と14年ぶりの低水準となっているのです。因みにアベノミクスで盛り上がった2013年の前半は今年の倍以上の取引がなされていたのです。それだけ今年の日本の株式市場はいつになく投資家に警戒感が台頭していました。

 そこに持ってきて先ほど指摘したように2013年の買いを上回る勢いでの、膨大な売りが外国人投資家から断続的に出続けていたわけです。これが現物だけの売りであればともかく、先物の売りが凄いのです。1-6月で外国人投資家が日本株を7兆7000億円売ってきたことは指摘しましたが、そのうち現物は3兆8000億円程度、残り3兆9000億円は先物による売りです。現物の売りは持っている株式を売っているわけですが、先物の売りは違います。先物ですから現物がないまま思惑で売っているわけです。これは持っていない物を売っているわけなので基本的には買戻す必要があります。かように今年外国人投資家、特にヘッジファンドは相場が下がるに違いないとみて、日本株を思惑的に売ってきたわけなのです。それもこれほど膨大な額の売り越しとなっているのです。

 今年の日本株の売買高が極めて少ないことは既に指摘しましたが、その薄商いの中でヘッジファンドがこれだけ膨大な売りを一手で出せば日本株の相場が下がるのは当然です、しかし先物での思惑的な売りが多いので、最終的に何処かで買い戻すこととなります。買い戻せば今度は薄商いの中急騰することとなります。いわば今年の日本の株式市場はこの外国人投資家、主にヘッジファンドの先物の売買でかき回されているわけです。ヘッジファンドに先物を売られれば下がり、その後買戻せば上がるという構図です。かように今年の日本株の動きの大半は、振り返ってみるとヘッジファンドの先物の売買だけで上がったり下がったりしているだけなのです。残念ながらかような流れが今年の日本株の大勢を決めている動きとも言えるのです。数字として出てきている日本株の14年ぶりの売買高の減少という事実とかつてないほどのヘッジファンドによる大量の先物売りを考えれば頷けるところです。今回のヘッジファンドの動きの特徴として現物の売りが主体でなく先物を使った売りが多いところがミソです。現物を限りなく売られ続ければ相場は下がり続けるでしょう。しかし先物であれば将来的な買戻しとなりますので、相場は戻すこととなります。<売られるーその後大きく戻す>この傾向が今年の相場でははっきりしているのです。

 先物の売りは東証の発表する空売り比率にその大まかな傾向が見て取れます。今年の空売り比率は極めて大きくなり空売り比率が40%を超えるのも恒常的となっています。その中でも記録的な空売り比率となった日は3月23日でした。この日、空売り比率は50%を超えたのです。このようなことは相場を見続けて以来初めて目にしました。売りの半分がないものを売っている空売りだったのです。日経平均はこの3月23日を境にして上昇し始めました。3月23日は20300円台にまで落ちた日経平均はその後先物の買戻しを中心として6月初旬には23000円台にまで戻したのです。余りに売られ過ぎた、ないしは無理して売り過ぎた反動として上昇したわけです。

 その後先物の決済が6月SQで終了すると、再びヘッジファンドは日本株に売り攻勢を仕掛けてきました。貿易戦争は激しさを増して米中の交渉合意はほとんど無理と思われ、そのような困難な情勢が連日報道されていました。ヘッジファンドを中心とする外国人投資家は6月18日から日本株の先物の大量の売りを再度開始してきたのです。この日から再び日本株の空売り比率が上昇、連日40%を超える空売り比率となってきました。かように6月中旬から日本株の売り崩しを目指す取引が活発化してきたわけです。特に7月は日本株の高値、1月から数えて6ヶ月目となりますので、信用取引中心に投げが大きく出てくる可能性もあったわけです。7月6日は米国が対中国の関税実施を始めるとアナウンスされていましたから、どうしても投資家の投資マインドは落ちるところでした、そこに向けてヘッジファンドは日本株に対しての空売り攻勢を大々的に仕掛けてきたわけです。ヘッジファンドはここぞとばかり日本株を徹底的に売ってきました、7月6日を前にした7月3日の時点では空売り比率は47.8%まで上昇、6日に向けた売り崩し兆候がはっきり見えたのです。7月5日ついに日本株の相場は大きく崩れ、新安値銘柄が続出、新安値銘柄の数は551と今年最高となりました。この日日経平均は21500円割れ、マザーズ市場は1000ポイント割れと投げ一色の惨憺たる様相となったのです。

ヘッジファンドの売りの買戻しが始まってきた

 ところが幸いなことに日本の投資家は7月5日時点で投げも終了となったようです。これ以後、日本株はこれ以上の投げ売りが出なくなって底堅い動きとなってきました。相変わらずヘッジファンドの売り攻勢は続いていたのですが、相場は下げなくなってきたのです。7月9日の月曜日は米国市場の大幅高を受けて日経平均は一気に300円超上昇となったのですが、この日、空売り比率が前日の44.8%から40.6%まで4.2%減少となりました、明らかにヘッジファンドの売りの買戻しが始まってきたのです。今まで売り込んできた大量の売りのわずかな買戻しの始まりです、ここでの注目は空売りが少し買い戻すだけで大きく日経平均が上昇しているところです。おそらく日本株自体に売り物が少なくなっているので起こってきている現象と思えます。売る投資家は既に売ってしまっていて、市場に売り物が極端に少なくなっているのでしょう。そこに買戻しのまとまった買い付けが入るので急騰となるわけです。更に7月13日にはドル円相場の半年ぶりの112円台突入となりました。かような情勢となり7月13日日経平均は一時500円超下げる展開となりました。この日も空売り比率は前日の44.2%から39.7%と4.5%減少となりました。空売りの買戻しが大きな上げの原動力を思えますが、わずかな買戻しでこれほど大きな上昇となったわけです。繰り返しますが日本株の売りものが極めて薄くなっているので、わずかな買戻しでも大きく上がってしまう素地ができているわけです。空売り比率は6月18日から19営業日連続で40%を超えていたのですが、7月5日ついに20営業日ぶりに40%割れとなりました。ここまで溜まった空売りは依然買い戻せていないでしょうから、今後売値より高いところで買戻す羽目となるわけです。この売った投資家が損失を被って高値で買い戻すことを証券業界では<踏む>と言います。そしてそのような相場を<踏み上げ相場>と言います。いわゆるヘッジファンドが思惑外れで損失を被って<踏む><踏む上げ相場>が始まると思われます。3兆9000億円に上るヘッジファンドの先物の売りがほとんどやられ状態となっていますので<踏み上げ相場>は益々上げの勢いを増していくでしょう。

 以上はファンダメンタル、経済の基礎的条件をメインにして日本株の相場を分析したものでなく、日本株の需給を中心に分析したものですが、相場の帰趨を計る上では売りと買いの力関係みていくのが最も重要だと思いますので、参考にされればいいと思います。

 私は今年<日本株の暴騰が始まった>という本を幻冬舎から出したくらいですから、基本的に日本株の将来的な大暴騰を確信しています。その最も大きな根拠は本でも指摘しましたが、日本株が極めて品薄状態になってきているということです。日本株は売りもの自体が極端に薄くなってきているわけです。その状態で何かきっかけでもあると日本株はいつ大暴騰が始まってもおかしくないわけです。

 今年、株式市場の売買高が極端に少なくなったことは指摘しましたが、その中でも特に少なくなったのは6月の最終週でした。この週は相場が枯れ模様となって1週間の売買代金がわずか11兆円という水準まで落ち込んだのです。特筆すべきはその時で、この6月の最終週は午前中常に株価が安かったのです。結果、日銀は午前中安いと午後ETFを購入するわけです、この6月最終週の5日間、日銀は毎日日本株ETFを買い続けたのです。日銀のETFの買い付けは年間6兆円で、現在累計で25兆円の買い付けとなっていますが、これが日本株の下支えと共に、将来的な日本株の暴騰を引き起こすことは必至でしょう。日銀の継続的な買い付けはじわじわ効いてきているわけです。だからヘッジファンドが大量に日本株を売って、売り崩そうとしても簡単に崩れないわけです。

 この日銀の買いについては議論があるところですが、中国では日銀どころではなく国家隊と言って国のあらゆるファンドを通じて100兆円超も2年余りの間に上海市場の株式を買い支えたのです。それでも上海市場は今年再度下げ始めています。じわーとゆっくり下がったところだけを買い続ける日銀の買い方は、時間の経過と共に大きな効力を発揮しつつあるのです。一方バブルを煽って上がり過ぎた上海市場を下げるのを無理やりに強引に止めた乱暴な手法を取った中国当局による上海市場の買い支えは100兆円でも足りず、株価が再度下げ始めるという有様です。

 株価は心理で構成されていますので、現在のように外部環境が余りに不透明で弱気がすぎますと、知らず知らずのうちに売られ過ぎているということが起こるわけです。株価の投資家心理を計る上で参考になるプットコールレシオという指標があります。株価を下がることに賭けるプット、と株価が上がることに賭けるコールの売買の比率をみる指標です。このプットコールレシオが7月には1.7とプットの売買高がコールの1.7倍にまで達しているということです。ここまでなるのは11年ぶりということで、如何に投資家が相場が下げることを意識しているかがわかります。かような投資家心理と貿易戦争、更には7月の信用取引期日を考えてヘッジファンドはいつになく日本株の大量の売りを試みたわけですが、現実には明らかに失敗となったようです。こうなると日本株は大方の見方と逆に大きく上昇となっていく可能性が高いでしょう。暑い夏到来と共に、日本株のサマーラリーが始まると思います。

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