自動車の自動運転の実用化が話題になっています。グーグルでは既に一般道路において走行試験を繰り返しているということで、今までは夢物語だった人のいらない人工知能による車の自動運転が目の前に迫ってきているようです。トヨタも2020年には自動運転で走る車の実用化を目指すということで、東京オリンピックが開催される今から6年後には世の中の風景が変わっていると思われます。

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自動運転技術はその中核となる人工知能

 とにかく最近のデジタル革命の速度には驚かされます。我々が現在では普通に使っているスマートフォンですが、これ一台で電話からメール、カメラの機能もありますし、ニュースをリアルタイムでみることができ、動画配信も始まっていますし、ゲーム機能も充実していて今では電車の中でもほとんどの人がスマホを見ている状態です。一昔前までは考えられなかった便利さですが、スマホがあらゆる機能を備えたためにスマホはますます必需品となる一方、いらないもの、すたれていくものも増える一方です。既に公衆電話など固定電話は街で探すのも困難ですし、デジタルカメラも以前ほど見かけなくなりました。またスマホを使って様々な情報を得ることができるので、雑誌や新聞など紙媒体の売り上げが大きく落ち込んでいます。時代が変わっていくことで様々な変化が生じてくるわけですが、スマホの例をみればわかるように、技術革新が我々の生活や行動形式に多くの変化をあっという間にもたらしていくことは明らかです。

 自動車の自動運転技術はその中核となる人工知能が大きな役割を担っています。今までロボットは様々な能力を持ち、役にたつ仕事をこなしてきましたが、その多くは単純な繰り返し作業であってロボットと言えども人間が日々行うような複雑な状況には対応できないのが一般的でした。ある決められた環境下において同じ作業を継続的に行うということにおいてロボットの活躍が期待され、そのようにプログラムされたロボットが主に単純作業を行ってきたわけです。ところが今回の自動車の自動運転となると、今まで我々が想像していたロボット、いわゆる人工知能のレベルが各段に進歩して変わってきたことを意識せざるを得ません。 

 既にチェスや将棋などではプロでもコンピューターロボットに勝つことができなくなっています。人工知能の発展速度は驚くほどのスピードで進み、日進月歩で進化しているようです。<ムーアの法則>といって半導体の演算速度は年間2倍のスピードで発展していくと言われていたのですが、まさに2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、132倍、264倍という風に伸びてきて今やかつての数字からは数を数えられないほどの天文学的な域に達していて、尚且つ日々進化し続けることによって、膨大な情報を吸収できる人工知能の能力は我々の想像を絶する域に達しつつあるようです。

 そうでなければ、そもそも人工知能による自動車の自動運転など不可能でしょう。自動車を運転するということは人間的な行為で簡単なことではありません。自動車を運転するということは極めて多くの予想もしない状況に絶えず適応しなければなりません。発進するときは左右を見渡し安全を確認する必要がありますし、道路を走っていても人や自転車の状況を確認してよける必要がありますし、常に対向車も意識しています。交差点でも信号のある交差点やない交差点、曲がるタイミングや速度など、状況に応じてドライバーは様々な対応を要求されているはずです。このような複雑な状況が絶えず訪れることを考えると、ある意味自動運転という作業においては自動車の自動運転は飛行機や列車の自動運転に比べて、はるかに人間的で複雑な環境変化に対応していくということです。それを考えると、人工知能など搭載されたロボットの自動運転にとっても一般道路における自動車の自動運転は非常にハードルが高いように思われます。その一般道路における自動車の自動運転が現在実質行われている状況で、それが一般的な実用化までもう少しという状況は驚くべき発展というしかありません。グーグルに言わせると今までは人間が運転してきたので事故が起こっていたわけで、自動運転の車だけが走るようになれば事故は起こりようがないということです。こうなると交通事故はゼロになって板金作業など自動車修理などの仕事はいらなくなりそうです。

 自動車の自動運転はまさに人工知能が限りなく人間に近づいて人間らしい複雑な状況に対応しつつあることを示しています。一連の流れは人間の知能をロボットが代替できるようになったということであって、これから出現するロボットは限りなく人間に近づいていくわけです。これはまさに手塚治のマンガ<鉄腕アトム>の世界です。

人間の知能をロボットによる人工知能が代替するようになっていく

かつての産業革命は蒸気機関を発明発展させることで人間の生活や社会を激変させました、人類はそれまでの人の力や馬や牛などの家畜に頼っていた力から、動力を機械に変えエネルギーの爆発的な利用ができるようになったのです。いわばこれは人間の持つ筋肉を機械に代替させる革命であって、石油、石炭その他のエネルギーの元を使って機械を思うように動かし、鉄道や自動車の発展、そしてついには飛行機の発明、発展によって人間の移動は飛躍的に大量に遠くへ更に早くと移動できるようになっていったのです。工場による大量生産も様々な画期的な技術革新も第一次産業革命によるエネルギーの飛躍的な利用が可能になったからでした。

 現在、起ころうとしていることは従来の人間の筋肉を機械が代替する第一次産業革命と比べて第二の産業革命と呼ばれるものです。人間の知能をロボットによる人工知能が代替するようになっていくのが第二の産業革命です。その典型的な例として自動車の自動運転の実用化が迫ってきたわけです。まさにこれからは人工知能が全盛を迎えて人間の暮らしは劇的に進化、想像以上の夢のような便利で快適な暮らしが待っているようです。

 しかしながらここで一つの重大な問題があります。それはこれほど人工知能が発展して人間の知能を代替するようになると、何でもロボットに任せることができるわけですが、その時、あなたの仕事が存在しているでしょうか? ということです。

 自動車の自動運転が完全に行われるようになると、今度は運転手がいらなくなります。スマホで自動運転のタクシーを呼び出し、目的地に運んでもらうわけですが、自動運転のタクシーが着けば、目的地を指定、音声認識されてあっという間に目的地に連れていってくれます。このような時代は目の前にきているのですが、こうなるとタクシーの運転手はいりませんし、バスの運転手、もちろん列車の運転手など全ていらなくなります。現在日本でもタクシーの運転手は40万人以上いますし、バスの運転手も12万人以上いますが、これらの人達は全て失業です。

 また今やニュースなども人工知能が書くことができるようになりました。こうなると記者の仕事はどうなるのでしょうか。証券アナリストなどの仕事も人工知能が代替するのは比較的容易と言われています。例えばある会社の業績がどのくらい伸びて、業界の状況はこれこれで、その株式の過去の動きはこうなっていて、決算書から今期の業績の伸びはこのくらいになって来季の予想はこれこれで、過去の株価の推移とその業種の全般的な状況から推移して今後この会社の株価はこのくらいになるだろう、というようなレポートは人工知能が巧みに予想でき書ける分野というわけです。様々ある具体的な現実を瞬時に全て飲み込んで分析、過去の株価の動きなどを網羅した今後の株価予想を行うことなど人工知能のもっとも得意とする分野かもしれません。

人工知能のロボット医者は瞬時にそれらの情報を正確に分析することができる

 医者の場合はどうでしょうか。我々は具合が悪くなれば病院に行って医者に自分の症状を説明します。そして自分の体質や過去の病歴なども説明します。医者はそれらの情報を聞きながら、その医者なりの判断と必要な場合は一定の検査をすることによって我々の病状を判断してその病状を我々に説明して薬などを処方するわけです。

 これを人工知能のロボットの医者であれば、同じく我々は自分の症状を説明して今までの病歴や自分の体質を説明すれば、人工知能のロボット医者は瞬時にそれらの情報を正確に分析することができるでしょう。また脈を図る、血液を採取するという行為を行えば、これまた瞬時に我々患者に何が起こっているか極めて正確に判断できる可能性があります。また人工知能のロボット医者のいいところは医療の最新情報がいち早く全て入ってくるということです。医療情報などは日進月歩で日々発展し続けています。今ではある分野の専門医でも最新の医療情報を得るためには1週間で160時間以上の最新の文献を読む必要があると言われています。普通の医者ではそんな膨大な知識を絶えず入手することは不可能です。しかし人工知能のロボットの医者はそれらの最新情報でも瞬時に人工知能に受け入れることが可能です。となると病気を診断してもらうのも、極めて正確に病状の判断や薬の処方をしてもらうには人間の医者よりも最新の人工知能を備えたロボット医者の方が優れている可能性が高くなる時代がくるかもしれません。そしてそのような時代は目の前にきているように思えます。

 学校や予備校や塾などの先生はどうでしょうか、これも人工知能を備えたロボットの先生が生徒各々に課題を学習させ、テストで結果をみて、その結果によって生徒各々の理解度や問題点を瞬時に把握して新しいプログラムを発動して、その生徒の理解度を深めるプログラムを瞬時に作れそうです。人工知能のロボットはあらゆる最新情報が常に絶え間なく入手できるわけです。マンツーマン教育でロボットの先生は生徒の個々の問題点や長所や短所を把握して学習向上の助けになることは必定でしょう。そしてそのような効率的な学習方法が効果的と知れ渡ると多くの親たちはこのような学習方法を取るように子供を誘導していくようになるでしょう。これでは学校の先生も塾の先生も失業です。一部の極めて教える能力の高い先生は極めて高給を取ることによって大きな評価を得るかもしれませんが、普通の先生は職を失っていくことでしょう。

 一連の話は夢物語ではありません。もう目の前に現実が迫ってこようとしているのです。第二の産業革命は第一の産業革命のように人類の生活方式や社会に劇的な変化を与えることでしょう。しかしそれは我々が人間らしく頭脳を使って行ってきた様々な仕事をロボットが代替することでまことに効率よく便利になるのですが、実は我々のほとんどが仕事を失っていくという驚くべき未来でもあるのです。

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