最高の出足となった今年の世界の株式市場ですが、それを補完するかのように発表されてくる世界各国の経済指標は予想を上回るものばかりです、明らかに世界の景気は勢いを増しています。企業業績も絶好調で先週末から始まった米国企業の決算も予想を上回ってくる様相です。日本企業も今月下旬から相次いで決算を発表しますが増額修正ラッシュとなるのは必至でしょう。また欧州も景気拡大が止りません。懸念されていたドイツの政局も、メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)と中道左派社会民主党(SPD)の連立協議が合意に至ったのです。相変わらず米国のトランプ政権はスキャンダルの暴露が止りませんが、それが米国経済に影響するようなことはありません。新興国も世界的な景気拡大からくる資源価格の上昇の恩恵を受けて景気拡大は続きます。かように昨年に引き続き、今年の世界経済も大きく活性化していくことでしょう。株高による資産効果も相まって実体経済との相乗効果も出てきています。

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米国・欧州・日本共に堅調な景気と消費

 米国をみてみますと消費が極めて堅調です。株高を受け、予想された通り年末商戦はかつてないほどの盛り上がりとなりました。昨年12月の小売売上高は前年同月比5.4%増と大きな伸びになっています。特にアマゾンなどネット販売の伸びが大きく、ネット販売の売り上げは前年同月比で12.7%増となったのです。一方懸念されていた実店舗中心の小売業も予想外に健闘しました。米国最大の百貨店であるメーシーズは年末商戦の11月~12月の売上高は前年同期比で1%増えたのです。実店舗は今までネット販売に押されっぱなしで売り上げは毎年減り続けていたのですが、3年ぶりの増加となりました。米国の強い個人消費の勢いを感じます。

 米企業の決算発表が始まりました。先陣を切ったJPモルガンチェースは1株利益が市場の予想を上回ってきました。更に新税制によって2018年の利益は大きく膨らむとの見通しも示したのです。これを受けてJPモルガンチェースの株価は2%弱上昇したのです、この上昇から市場では新税制によって企業が受ける減税効果がまだ相場に織り込まれていないという見方も広がってきたわけです。とにかく決算は期待以上ですし、今回の決算では米国企業の全業種が増益になるとみられています。トムソン・ロイターのまとめによると、米主要500社の10-12月期の利益は前年同期比11.8%増になる見通しで7-9月期の8.5%増から拡大、久しぶりに二桁増益となる見通しなのです。これだけの勢いがでるのは2009年から2011年にかけてのリーマンショックからの立ち直りの時期に次ぐものなのです。好調な企業業績の伸びに更に勢いがついてきているのがわかります。またアップル、マイクロソフト、アルファベット(グーグル)、アマゾン、フェイスブックなど大手IT企業も増益の勢いが留まりません、引き続き2、3割の増益が続く見通しです。あれだけ大きな企業となり、あれだけ売り上げがあれば通常は増益率が鈍るわけですが、一向に成長が止まらないのです。アマゾンの株価はついに1300ドル超えとなりました。上昇ピッチは早くまるで小型株のような動きです。

 欧州の景気も好調です。景況感を最も端的に示すと言われている企業の購買担当者への聞き取りから調査する景気指数(PMI)をみると58.1で6年ぶりの高水準です。ネックだった雇用情勢も確実に改善しています。失業率の低下は目を見張るほどで、昨年11月のユーロ圏の失業率は8.7%と2013年ユーロ危機時の12.1%から低下傾向が続いています。8.7%と言うと日本と比べて高失業率に思えますが、欧州では失業者に対しての支援が充実していて、失業して即座に生活に窮するという社会システムではないわけです。IMFによるとユーロ圏の経済成長率見通しは2017年が1.7%、2018年が1.9%となっていて、昨年10月に各々0.2ポイント引き上げられました。米国の成長率見通しが2017年2.2%、2018年2.3%ですからユーロ圏も米国と同じくらい好調という見立てです。

 日本の景気も順調です。11日内閣府が発表した昨年11月の景気一致指数は118.1となり、リーマンショック前の2007年10月以来、約10年ぶりの水準になったのです。景気指標の中でも特筆すべきは工作機械受注の拡大です。日本工作機械工業会の飯村幸生会長は11日<2018年の工作機械の年間受注額が1兆7000億円に達する見通し>という見解を述べ<ロボット、半導体、建機、自動車含め死角は見られない>というのです。これは驚くべき展開で、工作機械の受注は史上最高を更新し続けるのです。そもそも工作機械は<機械を作る機械>であって、通常設備投資の前段階で受注が盛り上がるわけです。ということは今回の流れは、これから設備投資が爆発的に盛り上がるということを示しているわけです。半導体など新技術に対応するための需要が急拡大している現在、生産が追い付かないので、これから設備投資が始まり、それが完了してこれから訪れる膨大な需要に対応できるという流れです。これでは当分の間景気が失速するはずもありません。世界中で驚異的な需要の盛り上がりが生じているということです。まさにAI、ロボット、電気自動車、自動運転など新技術の盛り上がりは予想を超えるスピードで進み、半導体はじめ品不足が恒常化してくるわけです。かような新しい流れに日本企業は米国の大手IT5社のように巨大なプラットフォームは持っていませんが、周辺技術は強く、日本の部品は圧倒的な競争力を持っています。政府の要請もありますが現実に人手不足が深刻になりつつあり、今年の春闘での賃上げは必至の情勢とみていいでしょう。いよいよ日本でも賃上げ、消費拡大、物価上昇という景気の好循環が始まることでしょう。今年は日本も景気爆発の年になりそうです。

昨年の世界経済の成長率は3.6%?

 一方世界貿易も着実に拡大傾向です。昨年トランプ政権ができてTPP離脱など世界的な保護貿易主義が拡大して世界の貿易も停滞するのではないか、という懸念が広がりました。ところが懸念とは逆に世界の貿易は大きく伸び続けているのです。国際通貨基金(IMF)によりますと昨年の世界での貿易量は前年比4.2%増となって1昨年の2.4%増から拡大中ということなのです。昨年の世界経済の成長率は3.6%です、貿易量が4.2%増加したということは経済の成長以上に世界の貿易は盛んになっているわけです。この成長率の伸び以上に貿易の伸びが大きいのはリーマンショック前までは当たり前の傾向だったのですが、リーマンショック後、世界の貿易の伸びは低迷を続けたのです。今回経済の成長率以上に貿易の伸びが増えたのは2014年以来3年ぶりのことでした。世界における保護貿易主義の拡大は杞憂で、現実には世界は<貿易ブーム>の様相を呈してきているのです。

 ニュースを聞くと、米国が北米自由協定(NAFTA)の脱退の可能性があり、更に米国は中国の貿易黒字に対して制裁を加える可能性があると言われ、また韓国に対しても自由貿易協定の再交渉を望んでいると言われています。これは事実で今後も米国はトランプ政権の下、保護主義的な政策を取ってくる可能性は否定できません、ところがそれを考えても、世界の経済的な環境はこれ以上望めないほどの貿易の活性化の流れにあって、何があっても貿易拡大の勢いは止められないと思われるのです。

 例えば日本のケースを考えてみても、日本は米国によるTPPの脱退によって約13兆円の経済押し上げ効果を失ったと試算されていたわけです。ところが昨年末日本は欧州連合(EU)と経済連携協定(EPA)を結びました、更に日本はTPPについても米国が脱退した後も、残った11ヶ国と新たな協定を発行することとなったのです。日本政府はこの欧州とのEPAによって約5兆2000億円、TPPイレブンによって約7兆8000億円の経済押し上げ効果があると試算しました。かようにこれらの協定締結によって日本のGDPを約13兆円押し上げられるというわけです。こうしてTPPから米国が抜けた穴を全て埋めてしまったわけです。かように米国が保護主義に走っても世界の他の国や地域は貿易での恩恵を受けようと保護主義に走る気配はありません。かように世界的な好景気を背景に貿易拡大は世界の大きな潮流となっているのです。

 かような情勢下では貿易依存度が高いアジア諸国などは最も恩恵を受けるわけです。昨年に引き続き今年もアジア諸国の成長は拡大していくとみられています。東南アジア主要6ヶ国、フィリピン、ベトナム、インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポールなどは今年の成長も約束されたようなものです。ドテルテ大統領の下で積極的にインフラ投資などを進めているフィリピンは大きく変わりつつあります。今年の成長率は6%を超えるとみられています。ベトナムも同じく6%の成長、インドネシアも5%強の成長が予想されています。昨年初めごろはトランプ政権の出現によって米中貿易摩擦が激しくなってこれら6ヶ国の経済は厳しい状況となると予想されていたのですが、全く杞憂でした。

中国は昨年対米の貿易黒字が過去最高

 そしてやはり問題は中国です、中国は昨年対米の貿易黒字が過去最高となったのです。何と2758億ドル(約30兆円)という途方もない額です。前年比10%増でした。中国はどうしても対米黒字を縮小することができません。昨年も米国からの資源輸入を爆発的に拡大したわけです。昨年の1-11月において中国は米国からの原油輸入を前年比で14倍、天然ガス輸入を21倍にまで拡大させました、更に大豆や牛肉の輸入も増やして輸入額は前年比で15%拡大させたのです。ところが米国に対しての輸出の拡大が止りません、旺盛な米国の個人消費の恩恵を受けて、おもちゃの輸出が27%も増え、電化製品の輸出も14%増えました。輸出全体では前年比12%の伸びです。輸入15%の伸びに対して輸出12%の伸びですから一見貿易黒字が減ったように思えますが、元々輸出の額が輸入の額の数倍もありますから、全体としてみれば貿易黒字が拡大となったわけです。米国も北朝鮮問題で中国の助けを必要としていますから、今のところ貿易摩擦は顕在化しませんが、将来的には何とも言えないところです。とはいうものの、トランプ政権も口ではいろいろ言いますが、打ち出す政策は極めて現実的になりつつあります。これだけ好調な世界経済をぶち壊すような愚策は強行しないでしょう。

 かように今年は昨年と違って懸念材料も少なく、世界経済にとっても、市場にとっても極めて順調な流れが予想されます。<1年の計は元旦にあり>で、年の初めの動きが極めて重要なのですが、今年世界中の株式市場はかつてないほどの好調な値上がりで始まったことは特筆すべきことです。今年は強気一辺倒で対応していいでしょう。

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