<GPIFの動きが6月にも出てくると、外国人投資家が日本株買いに動いてくるだろう>4月16日、衆議院財務金融委員会で麻生大臣が発言すると、株式相場は一変しました。日経平均株価はこの日この麻生発言を受けて420円高と一直線に急騰、今年2番目の上げとなったのです。昨今の株式相場の低迷の大きな原因の一つは外国人投資家の消極的な投資姿勢です。外国人投資家は昨年15兆円以上も買い付けた日本株を今年に入って2兆円弱売り越しているのです。アベノミクスにも飽きがでてきたところです。外国人投資家頼みの日本の株式市場にとって外国人が期待する変化が生じないと彼らの投資を呼び込むことができません。彼らが買ってこないと残念ながら日本の株式市場の回復は期待できないのです。

運用資産200兆円の巨大な年金基金の一端が株式投資に動き出す?

その意味では今回の麻生大臣の発言は大歓迎だったのです。GPIF、年金基金の130兆円に上る資産運用の方針転換は外国人投資家が最も注目することで、市場に多大な影響を与えます。昨年1年間で外国人投資家は15兆円に上る日本株買い付けを行ったわけですが、仮にGPIFが運用資産の10%でも株式購入にあててくれればその額は13兆円です。市場に対してもインパクトは計り知れないのです。しかも議論されているのはGPIFだけですが、仮にGPIFが運用方針を変えれば共済年金など他の公的年金基金も運用方針を変えるのは必至で、それらを合わせると運用資産200兆円の巨大な年金基金の一端が株式投資に動き出すことになります。外国人投資家はこのような日本の年金基金の大胆な運用方針の転換かあるかどうか、固唾を飲んで見守っているのです。

一方で、このGPIFの資産運用方針の変更、株式購入枠の拡大についてはもう既に実質決定されている、と考えていいと思います。世間ではこれから更に議論されると考えられていますが、もうそんな段階は終了、後はGPIFの株式購入枠拡大の正式発表を待つだけと思えばいいでしょう。私は再三強調してきましたが、安倍政権の基本方針はデフレからインフレへの政策転換で、この基本方針が変わることはありません。安倍政権はインフレに向けて国を一歩、一歩動かしているわけで、今回のGPIFの資産運用方針の変更も日程に従って、順を追って確実に進めているだけなのです。日本をデフレからインフレに変える以上、国民の大事な資産である年金基金もインフレの到来に相応した運用に変えていかなければなりません。株式投資の拡大は危険性がある、とGPIFの資産運用方針転換に反対するような人達は国のインフレに持っていくという強い決意を分かっていない人達です。安倍政権の意志は固く何があっても着実にインフレに向かって駒を進めるだけです。

GPIF改革

GPIFの株式購入の拡大の方針も安倍政権が発足してから当然の流れで進めてきて、これは既定路線であり、そのインフレにするという目標、更に国民に株式を購入するように誘導するという目標、更に国債の暴落に備えて年金基金の国債を売却して株式を購入することによって国民の実質的な資産を守ろうという大命題があるのです。この決定事項に沿って物事を進めているだけの話です。

一見するとGPIF改革ということで資産運用方針について様々な議論を戦わせているように見えますが、実際は違います。まずは基本方針としてGPIFの資金運用において国債を売却して株式購入するという結論が先に存在しているのです。その結論に向かって、有識者会議を繰り返し開催し、次のステップとして運用委員会の人事を決めてきたのです。いわば既に水面下で決定している結論を導くために面倒なプロセスを演出してきたのです。

やはり国民の年金基金130兆円の運用となると、国民一人一人に多大な影響を与えることですから、国民にとっても死活的な重大事項です。この場合、運用方針の転換を拙速に決めて後世の批判を受けるわけにはいきません。これだけ議論を積み重ねました、これだけ有識者の意見を取り入れました、との納得のいく過程が必要です。その議論の結果としてデフレからインフレに至る日本の変化を鑑みて資産方針の転換を決めました、というプロセスが欲しいわけです。ですから昨年来、このGPIFの改革については何度も何度も議論が続けられました。その議論が最終的な結論を導き出したと思ったら大間違いです。結論は最初から決まっていたのです、国債売却、株式購入の拡大です。この結論を導くための、一般的にはプロセス、実際は茶番が有識者会議の開催でした。そして茶番の第2幕が運用委員会における新しい委員の任命なのです。

時の政府というものは大きな力を有しているのです。委員会や日銀も含めてこれらが独立して意志を持った存在と考えるのは余りにナイーブです。例えば日銀ですが、異次元緩和まで行ったかつてないほど積極的に緩和を行う黒田総裁を日銀の総裁に任命したのは安倍政権です。安倍政権のデフレからインフレへという大命題の下で日銀総裁の人事が決定されました。それは具体的には緩和に消極的な白川前総裁の首を切り、緩和に積極的な黒田氏を新しい総裁に据えたということです。いわば政府の方針変化に伴って日銀の総裁、副総裁の人事を一新して、安倍政権の方針の下、今の日銀があるわけです。日銀の独立性と言いますが、トップと政策委員の人事権は政府が握っているわけで、政府としてはこの人事権をフルに使えば政策を実質決められるのは当然です。

これと同じことで、GPIFの改革も最初から株式購入枠拡大の結論ありきなのです。その方針に沿った人材を随所に配置して、有識者会議や運用委員会を開催してきたに過ぎません。いわば株式購入に対して消極的な今の三谷理事長の更迭は今後の既定路線と思えばいいでしょう。振り返ってみると、まずは昨年からGPIF改革と称して<公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議>を開かせ、この会議においては政府側の意を受けた伊藤隆敏東京大学大学院教授が座長に任命されました。国債売却、株式購入拡大の結論を出すように最初からそのような意見を持った専門家が有識者会議のメンバーとして選ばれました。人選されたメンバーが議論して、その結果として予想通り、国債売却、株式購入の提言が有識者会議の結論としてなされました。

次に今度はGPIFの実際の運用に携わる運用委員の入れ替えです。所轄官庁である厚生労働省の田村大臣はGPIFの運用については<有識者会議などで提示されているデフレ脱却を図り、インフレに移行しつつある国内の経済環境での運用を認識することが重要>と述べていますが、まさにこれも株式購入拡大へ導くための発言です。そしてこの意を受けたGPIFの運用委員の入れ替えが厚生労働省の下、行われたわけです。

段階を踏んでGPIFの国債売却、株式購入拡大

新しい運用委員の入れ替えにおいて、国債売却に消極的な委員は退任してもらい、新しく委員として株式購入拡大に積極的な委員を送り込むわけです。こうしてめでたし、めでたしで、段階を踏んだということを世間に示して、結果的に国債を売却して株式購入することとなりました、という最初から実は決まってきた結論に持っていくわけです。全ては茶番です。もう安倍政権においてはデフレからインフレへの方針大転換ですから、日銀や年金運用も含め、国が主導する機関はすべて方針転換が行われるわけです。ですから私は繰り返し、述べています。国の覚悟を見るべきだと、そして国策と一緒になって株を買うべきだと。

こうしてすべての茶番が終わり、段階を踏んでGPIFの国債売却、株式購入拡大が決まりますと、今度は国債の売却に対して誰がその国債を購入するのか、という問題が生じてきます。伊藤教授は私案として、今後1年かけてGPIFが25兆円程度の国債を売却して日銀がそれを購入すればいいと提言しています。これこそは国も目指している、表立って言いませんが、真の方針なのです。伊藤教授は私案として出していますが、ここまでの流れを見る限り、財務省も日銀も厚生労働省ももちろん政府もこの案で押していこうと決めているに違いありません。

この案であれば、GPIFが国債を25兆円も売却するわけですから、当然、国債の買い手が必要となってきます。こうして日銀の追加緩和の出番が訪れるわけです。今、世間では日銀の追加緩和についてCPIいわゆる消費者物価の上昇率で日銀が政策を決めていくわけで、この消費者物価が予定通り上昇しているから追加緩和は当分ないとみられています。大半のエコノミストやアナリストは日本国の根本的な政策を理解していないように思われます。日本国、安倍政権の命題はデフレからインフレに断固として持っていくことなのです。その主柱は株高を演出することです。確かに消費者物価の上昇率も重要な指標ではありますが、それはゴールではありません。日銀や政府がそれだけを目指すと思っていたら大間違いでそんな細かいところよりも重要な視点があるのです。それこそがGPIFのよる国債売却、株式購入であって、その一大改革に伴って日銀がバックアップして追加緩和ということでしょう。これこそ日本の株式市場の想像を絶する一大支援材料です。これが実現すれば再び株式市場は新値奪還に向かって一気に走り出すに違いありません。私はそれが起こる、それを安倍政権は起こすと思います。

伊藤教授は急ぐ必要があると述べています。何故かというと日銀が今の大量の国債買い付けを永遠に続けられるわけではないので、日銀が毎月国債を大量に購入している今のうちにGPIFが国債を売却する必要があるというわけです。思えば異次元緩和が始まって1年以上経っています。名目上は後11ケ月しか緩和を続けないということになっています。それでは急ぐ必要があるというわけです。実際、金利が上昇してきて日銀の国債の買い付けが少なくなってからでは金利急騰の恐れが強まり、そうなっては国債の売却が難しくなるという判断です。これら一連の流れ、麻生大臣の発言などを総合しますと、6月の成長戦略発表に絡んでGPIFの国債売却、株式購入の拡大、並びに日銀による追加の金融緩和、そして国家戦略特区の始動、法人税の減税、更に規制緩和など今まで懸案とされていた課題が一気に動き出す可能性があります。今のところ株式市場も世間も6月の成長戦略に大きな期待はかけていません。しかし安倍首相はこの7-9月期のGDPをみて来年の消費税引き上げを決める予定です。この7-9月期には経済成長を確実なものにするために死にもの狂いで政策を打ってくると思われます。こう考えると株式市場に弱気になる必要はないと思います。国の覚悟、安倍政権の帰趨を考えれば株式市場は夜明け前で経済政策も相場も転機は近いと思っていいでしょう。