日経平均が上げピッチを早めています。先週末金曜日には21155円、200円高と一気に節目の21000円を抜けて急伸となりました。私は一貫して株式市場は上昇基調にあると言い続けてきましたが、昨今の動きも当然の流れの始まりと思います。米国株式市場はNYダウ、ナスダック、S&P共々連日のように史上最高値を更新し続けていますし、欧州に目を向けてもドイツやフランスなど史上最高値を更新し続ける国ばかりです。新興国においてもインドやブラジルなど、そしてお隣の韓国も株価は史上最高値を更新中、日本だけが取り残される理由もありません。そもそも日経平均の高値は1989年12月29日、大納会の日の38915円ですが、それから30年近くも経過してもこの高値の半分程度の水準にしかすぎません。如何に当時のバブルが強烈だったかということでもありますが、世界を見渡して、また世界の株式市場の歴史をみてもかように30年間も高値が抜けず、高値の半分程度の株価水準に甘んじているというケースはありません。それだけ日本の株価は異様な安値に放置され続けていたわけで、現在起こってきていることはこの余りに酷かった低迷状態が正常化に向かっている流れと思えます。日経平均は21年ぶりの高値となって、次の節目は1996年6月の高値22666円となりますが、年内これを抜いてくる流れとなっていくでしょう。そうなってやっと日本の多くの人々の株価を見る目も多少変わってくるかもしれません。

>>最新の日本経済状況をセミナー・ダウンロードでチェック!<<

日本では株式投資が忌み嫌われ<株売却ブーム>が続いている

 私は日本株はバブルなどでなくその反対の<逆バブル>状態で、長きに渡って日本では株式投資が忌み嫌われ<株売却ブーム>が続いていると主張してきました。いくら経っても、政府や日銀が必死に<貯蓄から投資へ>と掛け声をかけ続けてもこの日本人の株式投資に対しての異様な拒否反応は変わっていかないようです。最も日本ではバブル崩壊後20年以上に渡って株価が下げ続け低迷するという期間が続いてきましたから、日本人が<貯蓄から投資へ>の意識変化を起こすのは難しいのは当然かもしれません。日本人全体で<株などやるものではない><株式投資は怖い、ほとんど損をする>という意識が抜けません。そして日本人の気質として、汗水たらして働いてお金を増やすことが大事で株式投資をはじめとする投資行為などで楽にお金を儲けようとする考えは良くないというような価値観が大勢を占めているということもあります。

 またマスコミや専門家においても、日本においては現在の株高に対して冷やかです。多くは株高を否定的にみて、年金基金や日銀による買い支えで持っている官制相場との論調が多いのが実情です。かような株式市場の先行きに悲観的な見方とは反対に、現実の株価は明らかに上昇基調となっています。そもそも21年ぶりの高値に躍り出てきたということは、何かが水面下で変わってきているわけで、日本の株式市場において大きなトレンドの変化が起こっていると判断すべきです。しかしながら日本全体を見渡すと、<官制相場>という指摘そのもので、国内には日銀や年金以外に株式を買い越している目立った投資主体は見当たらず、日本においては大多数の国内投資家が参加する株ブームなど盛り上がることはありえないでしょう。個人投資家、銀行や生保などの機関投資家共々、国内の代表的な投資主体は株を売り続ける一方なのです。基本的には国内の主だった投資主体はバブル崩壊後30年近くに渡って株を売り続けているわけです。そしてその売った株式を外国人投資家が購入してきたのが実情です。外国人投資家の日本株における持ち株比率はバブル崩壊直後の1990年末はわずか4.7%に過ぎませんでしたが2016年末には30%を超え、どの投資主体よりも日本株の保有比率が大きくなっています。

 国内投資家が株を売り続けた流れを追ってみましょう。かつての日本では株の持ち合いが盛んで企業や機関投資家や銀行、生損保などが互いに株を持ち合っていました。バブル期まではこの持ち合いよって発行株式のおよそ4分の3までが持ち合いの対象となり市場に出回る株は少なかったのです。その持ち合いの解消が始まってきたのがバブル崩壊後1991年からでした、機関投資家や銀行の本格的な株売りの始まりです。当時互いに持ち合っていた株式の総額は219兆円になりますが、その後この219兆円のうち137兆円もの株式が1991年から2017年までに放出される形となって売りに出されてきたわけです。この間、外国人投資家の日本株の保有額が約150兆円増えていますので、実質的には日本国内の株式持ち合い解消によって長期に渡って売り続けられた株式が外国人投資家に肩代わりされた形です。この持ち合い解消の売りは銀行、生損保、企業、各々から一貫して、売り続けられました。ですから銀行や生損保などはバブル崩壊後の27年間、株を買い越しになることはなく長期に渡って一貫して株を売り続けてきたわけです。個人投資家も基本的には同じです。株は懲りたということで売り続け、特に安倍政権誕生で日経平均が7000円台から2万円に大きく上昇する過程で未曽有の売りを出し続けたわけで、それは今も続いて現在進行中です。因みに個人投資家の売り越しの額ですが、アベノミクス相場の始まった2013年から見ていくと、2013年8兆7508億円、2014年3兆6323億円、2015年4兆9995億円、2016年3兆1623億円、2017年10月第一週現在までで3兆6055億円となっています。個人投資家はこの5年間だけでも総額24兆円を超す継続的な大規模な売りを続けているのです。当然のことながら日本の個人の金融資産に占める株式の割合は減ってきています。10年前の2006年は日本の個人の上場株保有額は118兆156億円で個人の金融資産に占める割合は7.3%だったのですが、2017年3月末時点では上場株保有額は96兆5251億円となって個人の金融資産に占める割合は5.3%と激減してきています。当然日本の個人投資家の全投資家に占める株式の保有比率は減る一方で、今年は史上最低の17.1%にまで落ちてきています。これら日本人投資家全般の売りものを一貫して拾ってきたのは外国人投資家であり、日本の株式市場は現在では完全な外国人主導の相場展開になっています。

日本株市場において唯一買い続けたのは日銀

 そしてここ数年、余りに不人気で国内投資家不在となった日本株市場において唯一買い続けたのは日銀でした。この日銀の買い付けについて買い支えという批判もありますが、日本全体が異様に投資マインドが委縮して<株売却ブーム>が収まらない異常な現実においては、インフレ率を上げるための一環として、ここで日銀が果敢に株式を購入することは政策として理に合っていると思われます。このような当局の株式買い付けの政策に対しては様々な例もあり、賛否両論ありますが、今回の日銀の買い付けについては将来歴史的な評価を受けると思います。

 かつて1965年、日本経済はオリンピック後の景気落ち込みによる激しい混乱が起きました。企業業績が急激に悪化、大同特殊鋼や山陽特殊鋼が相次いで倒産、サンウェーブも倒産と好調だった国内景気が一気に落ちたのです。そしてその流れから株価が低迷、証券不況に襲われたのです。山一証券は経営危機に突入(一回目の倒産危機)して、取り付け騒ぎとなりました。この時に時の大蔵大臣田中角栄が日銀特融を発令、これを契機に金融危機は収まったものの、証券界は長い証券不況に苦しんだのです。当時日経平均1200円を防衛するため、銀行と証券会社で作った日本共同証券が株を買い支えたわけです。日本経済はその後数年経てほどなく回復に至り、株価も大きな上昇となりました。この時買い付けられた株式は市場に売り出されることなく、企業に引き受けられることとなりました。これらの株式は基本的にバブル期まで保有され、結果大きな儲けを生むこととなったわけです。歴史的にみるとこの日本共同証券による株価の買い支えは正解だったわけです。

 1992年、バブル崩壊後日本政府は株式市場の買い支えを始めました。悪名高いPKO(プライス・キーピング・オペレーション)です。ところがこの時の買い支えは全く機能しませんでした。買っても買っても一時的に株価が落ち着くことはあっても、株価は更に大きく下げていったわけです。この時のPKO政策は結果的に大失敗で、PKOで使われた資金は大きな損失を被ることとなったわけです。

 一連の政策の推移をみると1965年の証券不況時の日本共同証券による買い支えは機能したわけですが、反対に1992年のPKOは失敗でした。これは日本経済が成長期にあった1965年と頂点に達した1992年では状況が全く違ったからでしょう。1992年から始まったPKOでは余りに激しいバブルの後で、バブルの後始末がついていない段階で、表面上だけ繕おうとしたPKO政策の拙さぶりが現れました。当時のPKOの時の株を買い支えた水準はPERで50倍以上のところであって、基本的にそのような国際水準をかけ離れた水準で株を買い支えること自体にも無理があったものと思われます。ないしは日本株のバブルが余りに激しすぎたということでしょう。

 ところが今回の日銀の株式買い付けは、前述したように異様なまでの日本人の株嫌い、日本全体の投資マインドの極端な委縮を受けたものです。上場企業の中では3%、4%の配当を継続して出し続ける企業が山のようにあります。それにもかかわらず多くの日本人が金利ゼロの預金を選考して、タンス預金などに殺到する現実は明らかに投資におけるバランス感覚を欠いています。日本人全体に投資に対しての異様なまでのアレルギーがあるわけで、このような余りに預金に偏った資産運用は現在のような日本の超低金利状態、あるいはマイナス金利政策を考えれば合理的な判断に基づいているとは思えません。日銀がこの水準で株式を購入して実質株高に誘導する姿勢を見せて、日本人全体の投資マインドを持ち上げようとしていくのは現状を鑑みれば理に合った政策と思われます。しかも日経平均のPERはまだ14倍台後半の水準で決して高くないどころか安すぎる水準なのです。

現在の上場企業の利益は1996年の時の4倍に達している

 日経平均は21年ぶりの高値を抜いてきたわけですが、21年前1996年の時と現在を比較してみましょう。企業利益に関していうと何と現在の上場企業の利益は1996年の時の4倍に達しているのです。この1996年はバブル崩壊後7年経過していたわけですが、まだ金融の整理はついていない状態でした。バブル崩壊後の不良債権が大量に水面下にくすぶっていたのです。そして当時の上場企業の利益は現在の4分の1だったわけですから、それで現在とほぼ同じ株価水準という事は、株価は現在の水準の4倍に買われていたわけです。PERは現在14倍ですが1996年当時は50倍だったのです。因みに現在日経平均株価が1996年当時のPER50倍にまで買われると日経平均は7万円を超える水準となります。またバブル期のPER80倍まで買われると日経平均は11万円を超えることとなります。如何にバブル期、並びにその後も日本株が現在から比較すると割高に買われていたかがわかります。それこそがまさにバブルなわけで、現状をバブルと解説する意見はバブル期の実情を真に理解していないように思えます。

 また当時の日本企業はバブル崩壊後の後遺症に悩まされ、借金体質でした。現在では上場企業の半分超が実質無借金となっています、そして上場企業はバブル期の借金体質、不良債権の解消に苦しんだことを受け財務体質の改善に努めてきたのです。その結果として上場企業の累積利益は積み上がり、企業の内部留保をみると1996年当時の倍に拡大しているのです。こう見ていくと日経平均が21年ぶり高値になってきたといってもその水準を調べれば21年前は割高だった日経平均が現在では余りに割安に放置されていることがあらゆる指標から明らかなのです。それでいて何故日本全体、並びに多くの専門家、そしてマスコミは株価の先行きに弱気なのでしょうか? 歴史的な経緯を見ることなく日経平均2万円は高い、という感覚や、北朝鮮を巡る外部要因の不透明さに余りに神経質になり過ぎているわけです。ないしは株価が上がらないことが当たり前のような感覚になり過ぎて人々は変化を感じ取るアンテナを失ってしまったようです。

 現在でこそ最もらしくPERの適正値は13倍から17倍程度と株価の水準を計る一般的な考え方が広まっていますが、バブル期はPER60倍から80倍が許容されていたのです。またバブル期には解散価値が株価を下回るなどということはあり得ない考えでした。解散価値とは指標で言うとPBR(株価純資産倍率)となります。PBRの値が1だと解散価値の値段、1を割れると解散価値以下の値段、PBRが5倍だと解散価値の5倍に買われているというわけです。利益水準から株価を計るのは最もポピュラーな考えで、それはPERという指標になりますが、もう一つ株価をその会社の保有する資産から考えていこうというのがPBRから見る株価の考え方です。利益は上がっていなくとも資産を大量に保有している会社もあるわけです。例えばあなたの会社が利益は毎年トントンで余り利益を出せなくとも、現金を1億円保有していたとしましょう。その場合あなたの会社が1億円以下の値段で評価されるのは不当と思いませんか? このように会社の保有する資産で株価を計るのがPBRという指標なわけです。利益は出ていなくても資産があればそれなりの資産評価に基づいた株価の評価が出てくるのは当然と思います。日本の上場企業においては現在約3分の1の企業が解散価値割れ、PBR1倍割れとなっていて、これは世界的にみても異様な安さなのです。

 かように日本株はPERでみてもPBRでみても、そして配当利回りでみても世界的に割安なのです。配当利回りに対して言うと、例え高配当を出す会社が続出している国において預金金利が高ければ配当利回りの相対的な価値はないでしょう。ところが日本は世界一金利が低く、それは世界で最も継続されているのです。当然配当利回りが高いことは株を購入する大きな動機となるはずです。その配当が年々増えていて先に書いたように有名企業で3%、4%の配当が山のように存在しているのは本来であればゼロ金利の預金から株式にお金が流れるのが当然なのです。ところがこれも起こりません。

 かように現在の日本株は、株価を計る3大指標であるPER、PBR、配当利回りにおいて完全な割安状態であり、この割安状態が常態化していたのが現実なのです。株価の適正値はその時のムードのよって高いも安いも理屈が通ってきたのが現実です。とはいえ、現在の株価が株価を計る世界的な最もポピュラーな指標であるPERで21年前の4分の1の水準であり、尚且つ米国株のPER19倍と比べてもかなり割安な水準にある。そしてPBRでは1倍割れが続出している、配当利回りに投資家は目もくれない、という現実を見れば異様と思えるはずです。再三指摘しているように、日本人全体の投資意欲は全く盛り上がらず、ほとんどの投資家が売り一辺倒な流れから脱せない現状をみれば、今回の日銀によるETF買いつけという政策は基本的に正解で将来的には、今回の日銀の買付けた株式は大きな儲けを生む出すことは必至でしょう。

 そもそも今年になって小型株市場は活況を呈していました。東証の小型株指数は26年ぶりの高値となってきていましたし、ジャスダック市場に至っては27年ぶりの高値を取ってきていました。日経平均を中心とする大型株が全く上昇していなかったわけですが、ここにきて選挙をきっかけとして大きな水準訂正に動いてきても当然でしょう。2015年6月、日経平均が20952円の高値を付けた時は円安の追い風もありました。当時から見て日本企業の業績は良くなる一方で、史上最高の利益を毎年更新し続けているわけです。10月下旬から始まる決算発表でも上方修正が相次ぐのは目に見えています。確かに北朝鮮情勢は不穏で先行きをはっきり見とおすことは難しい情勢ですが、企業業績や世界中の好調な経済と日本の金利のない状態を考えれば株価がもっと上昇していって当たり前なのです。

 また日本人は再三指摘してきたように余りに長きに渡って株を売り続け過ぎてきたわけです。そうなればいずれ売るべき株がなくなってきます。日銀は継続的に株式を購入していきます。ますます株が吸い上げられ薄くなっていきます。いよいよ品薄になった株式市場が世間の弱気をあざ笑うかのように想像外の上昇に向かっていくこともあり得るのです。株価の上昇は本物です、素直に受け止めてこの流れに追随していくべきです。

>>最新の日本経済状況をセミナー・ダウンロードでチェック!<<