2015年はどのような年になるでしょうか? 相場格言では今年の干支については<未年は辛抱>と言われていて12支の中では比較的パフォーマンスは良くありません。一方年初恒例の日経新聞による主要企業の経営者20人に2015年の株式市場の展望を聞いたところ、高値予想は平均で20550円と無難なところに落ち着いています。機関投資家や証券会社、並びに大方のアナリストの予想でも今年の株価については20000円から21000円程度の高値予想が多くなっています。最も株式市場の年初の予想は概ね、この予想のように年末にかけて1-2割程度上昇するとの答えになるのが一般的で今回も極めて普通な予想が出てきたに過ぎません。強気で鳴らす証券関係者の中には日経平均の3万円乗せを予想する声もあります。円相場に関しても円高に振れるという予想はほとんどありません。ただ120円後半までの円安を予想する声が多く、今年極端に円安が進むという予想は思ったより少ない気がします。

今年の株式市場は世間の予想以上に大きく上昇

 このような中、私は今年の株式市場は世間の予想以上に大きく上昇していくとみています。また円安も更に進んでいくと思います。今まで再三指摘してきたように株式市場も為替市場も歴史的なトレンドが発生しています。株式市場は大きな上げトレンド、円相場は大きな下げトレンドの中にあるわけですが、今年に関しては株の上げ、円相場の下げが激しく止まらないような勢いになるとは思っていません。今年1年間を通して日経平均は23000円から25000円のライン、円相場は130円から150円程度のラインを目指す動きかと思っています。もちろん株式市場は来年、再来年ともっと大きく上がっていくでしょうし、円相場も更に下げていき、いずれ止められないスパイラル的な動きに発展していくと思っていますが、今年はそのようなドラスティックな動きは起きず、比較的に順調に理想的な展開で推移していくように思います。

 株式市場が大きく上がっていくとみるのはもちろん歴史的なトレンドに沿った動きが昨年よりも加速していくはずという考えからです。アベノミクスが始まって2013年は大きく株価が上昇しました。2013年、日経平均は年間で57%上昇して41年ぶりの上昇率を達成、また円相場は18%下げ対ドルでは34年ぶりの下落率でした。次いで昨年2014年はさすがに勢いが落ちてきました。2014年、日経平均の上昇率は7%、円相場はおよそ15%の下落です。東証1部の時価総額は7年ぶりに500兆円乗せとなりました。日経平均は大納会こそ下がって3年連続の年末高は実現できませんでしたが、終わってみれば7%の上昇は先進国では米国に次ぐ大きさで、年末の終値としては1999年以来の水準に回復してきたのです。

 日経平均の次のチャート上の節目は2007年7月の18261円ですがこの水準は年初の早いうちに抜いてくるでしょう。また大きな節目となる2万円ですが、これも3月までに抜く可能性が高いと思っています。この2万円という水準は大きな意味を持っています。それは日経平均が2万円になると時価総額で600兆円を超える可能性が高いからです。日経平均の高値は1989年12月末の38915円ですが、この当時の東京株式市場の時価総額がおよそ610兆円です。仮に2万円を抜くとなるとこの1989年12月に達成した時価総額の記録を抜いてくるわけです。そうなると、日経平均という指数では日本の株価は新値を抜いていないわけですが、実質株に投下されている資金量を示す時価総額という大きな指標では新値を抜いたということにもなります。元々日経平均という指数自体が2000年の銘柄入れ替えなどによって指数の連続性に問題があったことは指摘されています。そういう意味では時価総額で新値を抜くという意味は大きいと思われます。仮に日経平均が大台の2万円突破となると象徴的な意味もあって、日本全体が株について更に強気転換となって、そこから相場は更に勢いをつけて上昇の速度を強める可能性が高いと思われます。日経平均の2000年以降の高値、いわば21世紀の高値は2000年4月の20883円ですが、これも抜いてくる可能性が高いでしょう。

予想される高値として

 現在、日経平均の今年の予想される高値として20000円から21000円の水準が広く出てきています。この根拠の一番のものは2015年度の日本企業の予想される増益率から1株利益の水準を予想し、その数値に平均的なPERを掛けて算出しているケースが多いのが現状です。例えば日経平均構成銘柄225種の2015年度の増益率のアナリストコンセンサスは12.4%と試算されています、となると1株当たりの利益はおよそ1226円となって、これに平均的なPERの数値15から17までをかけて一応合理的と思われる水準を算定するわけです。1226X17=20842となって概ね21000円程度の高値が理論上捻出されていくという計算になります。一方ゴールドマンサックスなどは円安による業績の上方修正を考えると増益率は22%に及ぶとみています。そうなると、1株利益は1330円となります。1330X17=22610となります。

 株式の値段を判定する絶対的な基準はありません。PERや配当利回り、金利状況など様々な指標があるわけですが、どんな指標であっても株価を絶対的に合理的に説明することは不可能です。ただ世界的にPERという指標がかなり影響力を持ち、一般的なので、株価を図るときの理論的な支柱として利用されているのが現状で、如何にもこのPERの数値が14倍から17倍程度が合理的かのように説明されてきたのが実情です。株価は多くの人達のコンセンサスによって決められてくるわけですから、一番ポピュラーな合理的と思われている指標を無視することなどできません。最も影響力がある株価判定の根拠として、現在PERという指標が存在して、現在の世界の潮流として世界的にPERが14倍から17倍程度が妥当という判断が広く存在しているという事実認識を持つことは重要です。

 そのうえで、私が今年の株価の予想をPERなどの絶対値から想定できる上限価格より上の値段を想定しているのにはいつくかの理由があります。

まずは日本ではこのような指標を無視した買い付けが自動的に継続的に入ってくるという事実を捉えなければなりません。既に広く知られているように年金基金GPIFや日銀の株式購入枠の拡大は決定されている事実です。日銀は年間3兆円の日本株買い付けを行うことを約束していますが、これは日本企業の業績や経済の先行きを考慮したものではありません。日銀は日本企業が如何なる業績の変化や企業内部の問題が生じようともそのような事は一切関係なく、日本株を年間3兆円購入することを約束しているわけです。これはある意味年金基金も同様です。運用における株式の比率を上げてくるわけですが、これも決定事項で確実に遂行していかなければなりません。PERとか配当利回りや、妥当な株価とはどの水準なのか、という株価や経済のファンダメンタルズを考慮した買い付けとは違った視点です。この年金基金の買い付けも10兆円を下らないとみられているのです。更にGPIFだけでなく公務員年金など他の公的な年金基金も株式買付に追随していくのです。更に今後は郵貯の上場も控えていますが、今度は郵貯や簡保も株式購入に参加してくることでしょう。年金基金や日銀の買い付けから始まった公的機関による日本株買い付けの流れは、更に郵貯、簡保、そして生損保と続いていく止まらない株購入の流れの一環です。やがて個人も含めて日本全体が株式購入にまい進する流れが株高、円安、インフレ到来と共に数年後にはやってくるでしょう。

更に直近ではNISAの買い付けも続きます。子供NISAができるわけですが、これは子供が18歳になるまで売ることができません。売った場合は無税特権が失われます。年金や日銀、NISAなどの買い付けは一度買い付けると現物沈潜のように株は吸い上げられ、その後売らないわけですから市場に出てきません。これでは株が品薄となってやがて上げピッチが急速に早まるのも当然というわけです。

 PERや経済のファンダメンタルズは株式購入するための基本的な指針となるものですが、日本の場合はまずこのように日銀や年金基金の株式の購入ありきという大前提があるわけです。如何なる理屈をこねるよりも買い手が多ければ株価は理屈など無視して上がるのです。日銀なども円紙幣を印刷して買うわけですし、年金基金は巨額な買い付け額となります。株価は基本的に需要と供給の関係で株価が決定されてくるわけですから需要サイドがこれだけ強力だと株価に刺激を与えないわけがありません。こうした継続的な巨額の株式の買い付けは当然、日本の株価をPERや配当利回りなど諸外国に比べて高く買われる素地を作りだしてくるでしょう。そもそも日本人の金融資産は1645兆円という巨額に及んでいるわけですから諸外国とは違って国内の株価も諸外国に比べて高くなるのが当然とも言えます。これが日本の金融資産に関しては今まで銀行や生損保などの金融機関を通じて国債ばかり買われるという歪みを生じさせてきたのですが、この流れは昨年から政府主導で急速に変わりつつあります。

米国市場は絶好調

 一方経済のファンダメンタルズはどうかというとこれもかつてないほどの追い風が吹いてきていると言えるでしょう。日本企業の最大の稼ぎ場である米国市場は絶好調です。米国の昨年7-9月期のGDPは5%の成長、自動車販売などはリーマンショック時の前の水準にまで回復、ドルは強く、これに原油安も加わって個人消費の更なる盛り上がりが期待されています。今や米国経済は世界で一人勝ちと言われるほど好調で、この米国経済に大きく依存してきた日本企業は更に業績を伸ばしていくことでしょう。

 円安も大きな追い風です。日本の主力企業の円ドルの想定レートは105円近辺に集中している状態です。120円近い円安が続けば、増額修正は必至となります。

 また原油安の日本国内のメリットは計り知れません。米国や欧州以上に原油安の好影響を受けるのは日本です。日本の膨大な貿易赤字の大半は原油やLNGなどエネルギーの買い付け代金です。これが劇的に縮小するのですから日本人全体の懐が潤うことは疑いありません。思えば日本の経済は絶えずエネルギーの価格の急騰によって翻弄されてきました。かつては二度にわたる石油ショック、そしてリーマンショックの前にはWTIの原油価格は149ドルに達していたのです。その原油価格が今やその時点の3分の1近い52ドル台にまで急落しているのです。しかも今後もう100ドル時代は到来しないとみられています。日本はアベノミクスが始まってから激しい円安となっていて対ドルで80円だった円相場は120円まで急落していますが、原油安の勢いは更に激しいので、日本で本格的な物価高が生じてきません。これは日銀の目指す2%の物価目標達成においては向かい風というわけですが、一般国民にとっては円安にもかかわらず本格的な物価高が生じてこないという神風のような追い風になっているのです。世界で最も海外へのエネルギー依存度が高かった日本にとって原油安ほど大きなボーナスはありません。

 また昨年末に決定した法人税減税も追い風です。企業の利益を考えた場合、減税になるのですから利益は確実に増えるわけです。これも株式市場には完全なる追い風です。

 もちろん、世界を見渡せば不確定要因は山のようにあり、手放しで楽観的になるのは危ないと思うかもしれません。原油安は日米欧など先進国にとって朗報ですが反面ロシアや中東諸国の経済危機や政情不安を引き起こしかねません。また欧州のデフレは更に酷くなる一方ですし、再びぶり返してきたギリシア危機も気になるところです。また中国は新常態といって今までの高成長から完全に成長速度を落としてきています。不動産バブルの崩壊懸念は相変わらずでここまでの順調だった経済成長の咎めが来る可能性は高いでしょう。

 様々な問題があるのは事実ですし、昨年の世界や日本の株式市場もこれらも要因に常に翻弄され続けてきました。しかし終わってみればニューヨークダウも史上最高値を更新し続けているし、日本株も3年に渡って上昇し続けているという事実をしっかり認識することが重要でしょう。原油安一つをとってもメリット、デメリット両面があります。それらを総合的に判断して日本にとってはプラスの部分が各段に大きいことを認識する必要があるでしょう。

 日本は異常なまでに円紙幣を印刷し続け、無理やりに円安を演出することで好景気を作り出そうとしています。一方で原油安などの神風が吹いて本格的な物価高は生じてきません。金利は日銀によって強引に抑えられています。そして日銀は物価目標達成のためには今年中に更なる金融緩和を行うとみられています。日本ではマネーの際限のない饗宴は果てることがないのです。これらの諸条件は全て強力な株高要因です。今年も世間の予想以上の株高となっていくでしょう。