<エンジン全開の今年の日本株を買わない手はない>2月24日安倍首相は都内で気持ちよく講演したのです。日経平均が18000円に乗せてから上げピッチが早くなってあっという間に2007年の高値を抜き、15年ぶりの水準に躍り出て今世紀に入っての新高値となってきたわけです。当然のことながらこのことをマスコミがはやしています。今回特徴的なことはドルベースでも日経平均が高値を取ってきたことです。ドルベースでの日経平均は2006年5月8日の155.28ポイントと2013年12月30日の154.95ポイントで大きく頭を押さえられてこの150ポイントの水準が大きな抵抗ラインとなっていたのです。今回あっさりこの水準を抜けて上げに勢いがついてきました。今まで日本株の上昇は必ずと言っていいほど円安と共に為替主導で上昇が起こってきたのです。それが今回は円安基調が一服しているにもかかわらず日経平均がドルベースでの新高値となってきています。日本株の最大の投資家は今や外国人投資家でありその保有比率は30%を超えています。東証1部の時価総額は550兆円を超えてきましたので外国人投資家の保有額は約165兆円にも上ります。外国人としては当然ドルベースでの日本株の値段が自らの投資価値ということになりますから、今回ドルベースで日経平均が新値を取ったということは彼らの投資がほとんど成功した形となったわけで、こうなれば当然投資家として勢いがついてきます。昨今外国人投資家による日本株の大量取得が明らかになってきましたが、日本株で大儲けをし始めている外国人投資家が相場に対して強気に転じるのも当然と言えるでしょう。

日本株は大相場になっていく

私は2012年から一貫して株式市場に関しては強気で日本株は大相場になっていく、と主張してきました。昨今の情勢をみても何も驚くこともなく当然のことが当然に起こったに過ぎないと考えています。むしろこの程度の上げに驚いている日本全体の受け止め方の方がまだ遅れているわけで、日本株は今後も更に怒涛のような上げを続け、世間一般が驚愕するような株価になっていくと考えています。それについては今まで何度も様々な角度から指摘してきたわけですが、今回は最近の上げ相場の直接的な主因となっている、現在の日本株を継続的に大量に買い続けている日銀や年金基金やかんぽ生命など、公的な資金の動向と、これらの公的な資金の今後の動きを追っていきたいと思います。

 まず年金や日銀のような国が実質的に直轄する機関が株の大量の買い増しに動いてきたことの背景をはっきり意識する必要があります。これらの動きは安倍政権が発足していわゆるアベノミクスが政策として大々的に行われるようになってから方針の変化が起こってきたわけです。アベノミクスは日本をデフレからインフレに強引に変えていこうという今までの日本になかった劇的な政策の変化です。デフレからインフレへの変化を主導するのは実質的に日銀です。日銀は日本円を大量に印刷して日本国債を怒涛のように買い付けるわけですからこれが最終的にインフレを引き起こさないはずがありません。インフレにならなければなるまで日本円を印刷するのですから足りなければ足りるまで金融緩和を拡大する方針であり、現在それを実行しているところです。現在インフレ率が2%に達していないのに日銀が今までの公約通りの追加緩和を行わないと様々なことを言われていますが、日銀が依然毎月8-12兆円の国債を円紙幣を印刷して購入し続けていることは事実ですから円の発行量は確実に増え続けています。

 またそのようなアベノミクスの政策に対して結果として成果をみているのは明らかに株価の動きです。アベノミクス自体が株価を目標として政策を行ってきた、とは決して政府は言いませんが、実際は明らかに株価を意識し続けていることは疑いありません。インフレ気味にすれば自然に株価が上がり、その上がった株価で資産効果という恩恵を受ける層が実質的な購買力をつけて消費が活発になって経済の好循環をもたらす、というプロセスこそがアベノミクスが始まってから今まで起こってきた最も大きな景気回復のツールであったことは否定できないでしょう。そしてこの株高に誘導することはある意味、アベノミクスの隠れた主たる目的でもあるわけです。株高が演出できればアベノミクスはほぼ成功していると言っていいでしょう。かように株の上昇はアベノミクスの成否を決めるキーポイントですからアベノミクス自体の中心的な政策として政権発足以来常に株高政策が求められているわけです。

株高政策が求められている

 この隠れた要求に基づくと共に、実際、日銀が円紙幣を刷り続ければ時間がかかってもいずれ日本に本当のインフレが来るのは必至でしょうから、それに備える意味もあり、国民の大事な資産をその時にそれなりに増やしておかなければならない、という大命題の下、日銀やGPIFなどの年金基金の株式大量買い付けが始まってきたわけです。

 かように公的部門の株式買付は時代と時の政府の実質的な要請によってもたらされたものであり、これは日本国の新しいデフレからインフレに持っていく、という大命題を実現するための中核的な政策でもあるわけです。一部、この公的部門における株式購入拡大について批判的な論調もありますが、それは国の覚悟や実力を分かっていない考えです。国が中央銀行を使って円紙幣を刷り続け、更に中央銀行を使ってその印刷した円紙幣で株を買い続ければ株が上がらないということはあり得ません。極端な話、今年日銀が円紙幣を1000兆円印刷してその資金を全て使って日本株を購入すれば日経平均は軽く100万円を超えるでしょうし、同時に激しい円安とハイパーインフレに陥っていくでしょう。これは極端な事例を示したわけですが、基本的に円を印刷してインフレを起こそうと思えば日銀はそれを実現することができるのです。現在はインフレを起こすのにどの程度の円紙幣の印刷が妥当であるか、一生懸命、その度合いを計っているところです。そして今のところインフレが現実に起こってきた場合はそれを止めるために今までの緩和政策、いわゆる円紙幣印刷を止め、資金回収に動くという方針です。これがいわゆる金融政策で言う、出口ということです。私は今回の日銀による金融緩和政策に出口はないと思っているので、止まらない株高と将来のインフレ到来は避けられないと思っていますが、それはさておき、ここでは日銀が円紙幣を限りなく印刷して株式を買うなり国債を買い続けて、それを際限なく続ければ、どこかの時点でインフレを起こすことができるのは当然である、という根本的な点を捉えてほしいと思います。

 このような<何としてもインフレに持っていく>という国やその方針の執行機関である日銀の大きな意志を考えれば、国民の大事な資産である年金基金が株式購入枠を大きく拡大させるのは国の方針上当然のことです。

 そしてこのGPIFによる株式購入枠の拡大、更に国家公務員年金や地方公務員年金や私学教職員年金の株式購入枠の拡大も同じように国の方針に従った当然の方針転換なのです。2月26日付の日経新聞によればこれら3つの共済年金約30兆円は株式運用の比率を8%から25%までおよそ3倍に増やすということです。これによって株式購入枠は5.1兆円拡大するということです。これら3つの共済年金は将来資産運用をGPIFと統一化していきますからそのための当然の準備です。

 また2月28日付の日経新聞によるとGPIFの2014年10-12月期の決算では運用収益が6.6兆円に上ったということで、運用資産は137兆円と過去最高規模に拡大したということです。もちろん内外の株高がこれだけの収益がもたらされた牽引役だったのです。GPIFの2014年12月末時点での国内株式運用比率は19.80%と9月末の17.79%から2ポイント上昇しています。運用資産額と収益額を用いて試算するとこの期間2014年10月―12月までの株式購入額は約1兆9000億円に上っています。このペースで日本株を買い続ければ年間の買い付け額は7兆6000億円となります。これに日銀の3兆円や3共済年金のおよそ5兆円に上る買い付けがあると、これら公的な資金だけで約15兆6000億円に上る買い付け額が算定されます。2013年日本株は6割上昇しましたがその原動力は外国人投資家でした、外国人投資家の2013年1年間の買い付けは約15兆円だったのです。この時、この外国人投資家の買い付けに売り向かっていたのが日本の投資家です。今回公的な資金が15兆円に上る日本株買い付けを行って、更に外国人投資家などが売りものを出さなければ日本株の上昇は更に大きく弾みがつく可能性が高いのです。

株式市場の上げは相当大きくなっていく

 私は日本では一貫して<株売却ブーム>が起こっていると指摘してきました。外国人投資家は今や日本株の筆頭株主であり日本株全体の30%強を保有しています。それに対して日本勢は一貫して株を売り続けてきたのです。そして売るに売って売る株がなくなってきたところに今後はかように公的な資金が雪崩を打って日本株買いに走ることが決まってきました。そしてその流れはまだ昨年末GPIFの1兆9000億円程度の買い付けで序の口が始まったに過ぎないのです。ですから私は今回の株式市場の上げは相当大きくなっていくと一貫して主張しているのです。

 それだけではありません。かんぽ生命やゆうちょ銀行、そして最後は生損保までも今までの資金運用方針を180度変えて国債から株式へと大きく転換していく可能性が高いのです。日本郵政グループの民営化の総仕上げ、グループ会社のかんぽ生命保険、ゆうちょ銀行、日本郵政の株式同時上場は今年秋に迫っています。これらの会社が民営化となると当然、その巨大な資金を如何に運用するかという切羽詰まった問題があるのです。例えばゆうちょ銀行ですが今までは運用資金205兆円のうち、その53%の約110兆円まで日本国債で運用していたのです。日本郵政としてみるとゆうちょ銀行はグループ会社3社の中核会社となります、ゆうちょ銀行が日本郵政グループ会社全体の8割の資産を保有している状況です。当然のことながらゆうちょ銀行の経営が順調でその価値が高まらなければグループ全体の企業価値も上がりません。ゆうちょ銀行としても勢い民営化して普通の銀行のように企業融資に乗り出したいところですがそう簡単ではありません。現状でどの銀行も融資先を見つけることに苦慮していることを考えればわかりますが、この融資の分野は銀行業の中でも高度の経験やノウハウが必要で、いきなり民営化したゆうちょ銀行がうまくできるわけもありません。となるとどうしても巨大な資金を如何に増やしていくか、という命題に対しては資産運用で稼ぐという選択肢を取っていくしかないのです。資産運用で稼ぐとなれば、今までの国債投資のような低利回りでは稼ぎようもなく、当然の事ながら株式投資に踏み出すしかありません。今までゆうちょ銀行は株式投資の運用経験はゼロで、全く株式投資では素人でした。ゆうちょ銀行は今夏リスク運用を専門的に行う部署を立ち上げるのです。これはゆうちょ銀行がいよいよ本格的に株式投資に乗り出してくるということの準備に他なりません。年金基金GPIFはその運用資産137兆円のうち、25%の34兆円を株式投資に充てる予定ですが、ゆうちょ銀行の場合株式運用額ゼロからの出発になりますのでGPIF並に株式運用するとなると運用資産205兆円の25%で、いきなり50兆円以上の株式購入額が突如出現ということになります。今後の展開を見なければわかりませんが、ゆうちょ銀行が株式投資に乗り出してくることは必至と思われます。このことはまだ株式市場では話題にもなっていません。しかしこれまでの年金基金や日銀による株式購入の流れを考えれば当然ゆうちょ銀行の株式運用への参入は時代の要請でもあり避けて通れない道です。かように劇的に日本の公的な資金の運用は変わろうとしているのです。

 富国生命保険の米山社長はロイターとのインタビューに答えて<国債市場の流動性がほとんどなくなっており、仮に長期金利が2%を超えていても、そういうものは持つべきでない、危ないというのはわれわれの運用哲学>と驚くべきことに生保の資産運用の柱となってきた国債運用を否定して<ヘッジ付き外債や株式に投資していく方針>と述べています。株を徹底的に売り続けた生損保各社もついに過渡期を意識し始めたようです。富国生命のもならず多くの生損保各社も似たような危機感を有していると思われます。時間の問題で生損保各社も株式運用に乗り出してくることでしょう。

一度動き出した流れは止めようもなく大きな流れに拡大していくものなのです。全ては日本の国がデフレからインフレに、低迷していた株安から株高へと誘導させていく、途轍もない大きな歴史的な転換を起こそうとしているわけです。このデフレからインフレへの流れは誰もがはっきり認識するまで拡大し徹底的に続いていくのです。その間、日本の株価は上がり続けることでしょう。日経平均はいくらまで上がっていくのでしょうか? 当然ターゲットは1989年12月30日の38915円が意識される時が来るでしょう。私は今回の相場で数年後日本株はこの高値を抜いてくる可能性が高いと考えています。

 再三しつこく指摘してきたように資産運用の上では株を買わないとどうにもなりません。現状は公的な資金が中心となって動く日本株の相場なので日経平均採用銘柄を中心とした日本を代表する主力株主体の相場展開となりそうです。しかしこれら主力株が一時的に上がり過ぎということになって他の中小型株と余りに格差が開いてしまうと今度は個人投資家の怒涛の買いで中小型株も一気に上昇ということになるでしょう。中小型株の相場は株が小さいですから上げに入ると一気に爆発的に上昇するエネルギーを持っています。かように日本国の政策と続々と進出してくる国内勢の株式投資の拡大によって日本株は世界で最も上昇する市場に変容していくことでしょう。日本人は一方方向へ極端に動く性質があります、バブル期は株を狂ったように買い、現在では株式投資をまだ極端に嫌っています。再びバブル期のように誰もかれも株式投資という風になるかどうかはわかりませんが、日本の持つ巨額な金融資産の源泉である、年金やゆうちょ銀行や生損保までが動き出し、持続的な株高が続くことによって人々の意識も徐々に変わってくるでしょう。こうしてここまで長い間続いてきた日本全体を覆っていた<株売却ブーム>が終了すれば、怒涛のような大相場が待っていると思われます。