ギリシア情勢の悪化を受けて世界中の株式市場が混乱気味です。ギリシアとEU側がもめるのはいつものことで最終的には妥協に至るはずと嵩をくくっていた市場ですが、最後まで強攻姿勢を貫いてデフォルトにまで突っ走っていくチプラス首相の動向までは読み切れていなかったようです。震源地の欧州はもちろん、日本、米国そして中国と株安は世界に連鎖していきました。元々ギリシア情勢が悪化しても直接的に日本の経済が大きな打撃を被るわけではありませんが、市場は思わぬショックにはもろいものです。

 しかしほどなく日本の株式市場も冷静さを取り戻してくるように思います。年初から見れば世界を見渡しても日本株は圧倒的にナンバー1のパフォーマンスとなっています。欧州市場はギリシアの問題がのしかかり、米国は金利引き上げが迫っていますし、中国はここにきて株価が暴落気味となっています。企業業績の推移をみても今年度、来年度見渡しても日本企業ほど順調な業績が予想される国はありません。日本株は先週2000年4月の高値20833円を抜いて18年半ぶりの高値に躍り出てきました。その後今回のギリシアショックや中国株の急落に足を引っ張られて足踏みしているものの、その強さは際立っているとみていいでしょう。日本株の強さの源泉は何でしょうか? 世界情勢は思わぬ揺れが生じますが、日本株に死角はないでしょうか?

 私は2012年から一貫して日本株は大相場に突入したと強く主張してきました。そしてまだ日本株の相場は若く序の口であり、今後も相当な上昇に向かっていくと思っています。このことに関しては拙著でも何度も指摘してきましたし、その背景も詳しく書いてきましたが、今回日本株が2000年の高値20833円を抜き、更に1996年の22666円を目指す動きに入ったことで、新たに現状を掘り下げて様々な具体的な事象を指摘したいと思います。

個人投資家の売りも限界に

 まずこれも一貫して言い続けたことですが、日本株は日本の個人投資家の売りが止まらず、日本は株売却ブームとなっていて、このままでは売り物が干上がってしまって株式市場が極端な売りもの薄の状態になり、その結果として相場の上げに加速がついてくる可能性が高いということです。いままで私が一貫して主張してきたことが実際の日本の投資家達のたゆまない日本株の売りで現実に極端に売りもの薄の状態が明らかになってきました。

 まず個人投資家ですが日本の個人投資家の日本株の持ち株比率は3月末で17.3%となり過去最低の水準を更新しつつあります。個人投資家はバブル崩壊後、日本株を一貫して25年以上に渡って売り続けその額はおよそ50兆円を超えているのです。アベノミクスが始まった2012年11月からでも16兆円超の売り越しとなっているのです。皮肉なことですが日本の個人投資家の証券会社に滞留している普通預金(MRF)、これは株や投資信託を購入するために証券会社の口座にプールしてある資金ですが、この資金がアベノミクスが始まってからの個人投資家の株式の売り代金に近い12兆円となっています。これは個人投資家が売った後に売値より安い値段で自分の売却した株や投資信託を買い戻せていない一つの証左とも思えます。この12兆円は一応株や投資信託を購入したいという個人投資家の意志として証券会社に滞留させているものと思われます。今後も上がれば個人投資家は更に売り続けるのかもしれませんが、もうバブル崩壊後50兆円も売り続け持ち株比率も過去最低の水準にまで下がっていますので、今後も今までのペースで売り続けることは不可能でしょう。そういう意味では株を一貫して売り続けた日本の個人投資家の売りものももう売り続けるのが限界に近づきつつあると思っていいでしょう。何処かの時点で極端に個人の売りが大きく減り、一転して買い一辺倒になるときも近いでしょう。

機関投資家も「売りつくし」

 日本株を売却してきたのは個人投資家だけでなく、日本の機関投資家も同じです。GPIFなど年金基金の株式購入が株式市場の話題になっていますが、彼らが日本株を買い始めたのは昨年からでそれまでは怒涛のように日本株を安値で売り続けていました。年金基金は大切な日本人の資産を稚拙に運用してきたのです。いずれにしてももう年金基金は有力な買い手に変身したわけで、当分株式市場の売り手にはなりません。

 また特に日本株を徹底的に叩き売ったのは生損保や都銀・地銀です。生損保などはバブル時その保有資産の50%近くが日本株だったのに今やその比率は5%台にまで落ちてバブル時の10分の1に近い水準になりつつあるのです。そして生損保もここにきてついに株式を買い転換です。また都銀・地銀も株を売り続けてきたわけですが、日本の銀行の場合、政策的に株式の持ち合いというシステムの中で取引企業の株式を保有してきたわけですがこれも25年かけて徹底的に売却を続けてきました。

次の日経平均株価のターゲットは1996年の22666円が目標値となりますが、この1996年当時、生損保と都銀・地銀の日本株の保有比率は39.8%でした。まさにバブル崩壊して数年経ても日本株の最大の保有者はこれら生損保や都銀・地銀だったのです。これら生損保や都銀・地銀の現在の日本株保有比率はわずか8.7%となり1996年当時から5分の1近くに激減しています、これら機関投資家は日本の個人投資家以上に日本株を叩き売ってきたことがわかります。日本株を安値で叩き売ってきたわけですから運用収益など上がるはずもありません。生損保が契約者に高配当を出せなかったり、銀行が預金者に金利を出せなかったわけもわかるというものです。かようにこれら日本の機関投資家は余りに稚拙な資金運用を続けてきたわけですが、日本国というシステムに守られて契約者や預金者を犠牲に潤ってきたことがわかります。結果的に生損保や都銀・地銀は今まで日本株を売り続けたために今後売れる株式は極端に減っているのです。これら売却した株式は一時的には国債に化けていましたが最近は都銀をはじめとして多少資産運用のスタイルを変えてきています。いずれにしてもこれら生損保・都銀・地銀も極端な日本株売りはもはや不可能です。かように日本の個人投資家、生損保、都銀・地銀など日本株を売ってきた主体が余りに長きに渡って日本株を売り続けたために日本株の保有状況が一変しつつあり、もう売る投資主体が株を売り切って市場に出回る株が極端に少なくなっているのです。その証左として市場が高値を取っているのに売買代金が極端に少ないという現実があるのです。

市場の主役は外国人投資家

 一方で一貫して日本株を購入してきたのは外国人投資家でその保有比率はついに31.7%となって今や外国人投資家は日本株の筆頭株主となりました。バブル時は外国人投資家の日本株保有比率は5%程度だったわけで今とは隔世の感がします。こうして日本の最も大事な宝であり技術力のある優秀な日本企業の株式は実質外国人投資家の手に渡りつつあるわけです。私はいずれ日本は止まらないインフレとなり株式を保有している者だけが経済的に生き残れる状態が訪れると思っていますが、その時には多くの日本人はインフレで泣くことになりそうです。株高の果実をほとんど外国人投資家に持っていかれる将来が待っています。外国人投資家と言っても様々な投資家がいますが、中長期投資という意味では世界各国の年金基金が多いようです。

 かように日本株の現状をみると、今まで売り手であった日本国内の生損保、都銀・地銀や個人投資家など売りものを出してきた投資家が売るのが限界に近づきつつあるわけで、これが将来日本株の地殻変動を起こす可能性があるということです。物の値段を最終的に決めるものは理屈ではなく需要と供給の関係です。売りものがなくなれば値段がロケットのように急騰してもおかしくないのです。

 その典型的な兆候が今年通しての相場、並びに6月相場に現れたと思っています。今年の日経平均の動きをみると極めて堅調でほとんど大きく下げるケースがありません。アベノミクスが始まってから2013年2014年と相場は上げ続けましたが、その途中では常に大きな調整期間がありました。例えば2013年5月23日には日経平均は一日で1000円近く下げて深い調整に入りその後結局高値から15%の調整があったのです。また昨年2014年も4月にかけて日経平均は年初から下げ続けやはり年初から15%近い調整となりました。かように相場は上昇相場になっていてもその時々の局面では一定の調整が入るのは普通の相場の上げパターンなのです。ところが今年を見る限り下げらしい下げは全くありません。わずかに下げた局面は今年4月23日の高値20252円からその後の安値5月7日の19257円までわずか4.9%下げただけに過ぎないのです。今回ギリシアショックで大きく下げましたが下げ率は4%程度で早くも相場は切り替えし基調です。かように今年の日本の株式市場の力強い動きをみると今年の相場は極めて強く何処かで急騰する可能性が高いと思えるのです。

それでも株は上がり続けた

 更に注目すべき点は相場に過熱感が全くないどころか、多くの投資家は2万円達成で相場が下がると弱気になっていたという事実です。これが相場の中で端的に現れたのが6月18日の瞬間的な日経平均の2万円割れの局面です、この時私はこれは一瞬で今後急騰する可能性が高いと自分のブログでもラジオ放送でも指摘しました。これはその時の東証の空売り比率が38.3%と過去最高に達するという異常値を示していたからです。空売り比率とは売りものに占める空売り、いわゆる現物を持たないのに売る、投機的な取引です、空売りですから決済するには買戻しを行わなければなりません。その空売り比率が過去最高にまで膨らんだということは、売りがそれほど強烈だったわけで、かつてないほど投資家が弱気な心理に傾いていたことを現しています。2万円を超えた時点で多くの投資家は実はかつてないほど、歴史的な水準にまで空売りが膨らむほどに相場に弱気だったのです。とても信じられないでしょうが、相場はマスコミの解説よりも投資家の行動にはっきりとその心理が見て取れるのです。売りものが多い、かつてないほど空売りが多いということはそれだけ相場が下がるに違いないと確信している投資家がかつてないほどに多かったというのが事実なのです。

 日経平均が上げ続け2万円に達したということで、これほど投資家は弱気だったのです。だから日本の個人投資家は相も変わらず日本株を売り続けるのです。そして大事なことはそれでも株は上がり続けたという歴然たる事実です。投資家は過去最高の空売りを行うほどかつてないほど弱気な投資行動に走っているのに逆に株が上がってきた、という事実こそが実は相場にもう売り物がなくなっている、だから株が上がったと冷静に客観的に判断する必要があるのです。その証拠に日経平均が2万円割れをした瞬間から日経平均は一気に上げ足を早めて新高値、18年半ぶりの高値になってきたというわけです。

 現在相場の主導権を握っている年金基金などの海外投資家や国内で買い続けている日銀やGPIFやゆうちょ銀行など巨大な機関投資家は上値をどんどん追っていくような買い方はしません。押し目買いに徹しています。ですから相場は過熱することなく程よい上げを続けてゆっくりと上げ続ける展開です。しかし一度でも大きく下げるような局面が訪れると売りもののほとんどを拾われるわけですから、その反動で一気に上昇速度を早めるというわけです。

円安で膨張した企業利益と株価

 日本株がバブルだなんて指摘は完全に的外れです。今回2000年4月の高値20833円を抜いたわけですが、当時はインターネットバブルと言われていましたが、当時の日本企業の予想1株利益はわずか290円です。ところが現在は予想1株利益は1320円で2000年当時の5倍近いのです、更に円安で増額修正されると言われているのです。バブルと言われた2000年当時PERは一時100倍を超えていましたが、その当時のPERにまで現在の日本株が買われれば日経平均は1320X100=13万2000円です! このような値段は驚くかもしれませんが、今後バブルでなくこのような値段が実現されてもおかしくないのです。

 日本企業の収益の伸びを見てください。ここにきて全般的に企業収益の拡大が見て取れますが、アベノミクスは始まってから最も大きな利益は円安によるものです。1ドル売って80円しか入らなかった売り上げが1ドル125円になったことで収益が急拡大しているわけです。仮に日本国債に問題が起きて、日本国債を返すことができない、必然的に円安が止まらなくなって日本のインフレが止まらなくなったらどうなるでしょう? 1ドル200円、300円という怒涛の展開になればインフレ利益で企業は名目上は膨大な利益を上げることになってそれに妥当な株価が実現すれば日経平均10万円も100万円も妥当な相場となるのです。現実にアベノミクスが始まって給料が2倍になったのでしょうか、円安が起こりそれに伴って企業利益が円安によって水ぶくれして株が上がっただけではありませんか。

外国人の怒涛の買いと株暴騰のリスク

 日本人はリスクシナリオとして株の暴落ばかりが頭に入ってくるようです。政府も日銀も日本をデフレからインフレに誘導すると公言してその政策を必死に行っているのです。そして問題は実際にインフレになった時にそれが止められるのかどうか、ということです。これがいわゆる日銀の出口戦略ですが、これに対しては日銀は一言も発していません。相場とか市場というもののリスクは上げ下げ双方に存在しています。これから来るリスクはデフレのリスクでなく、インフレのリスクです、であればリスクとして頭に置いておくことは株暴騰のリスクでしょう。日銀も買い、年金も買い、外国人投資家も日本株にいつになく注力しているわけで、日本株は今や世界で最も好まれる投資対象になりつつあるのです。

 世界の投資家は日本株を怒涛のように買いに来ています。アベノミクスが始まってから海外投資家の持ち高は倍近くに拡大しているのです。こうした海外の年金基金の日本株保有のこの3年間の拡大をみるとスペインの保有株は4倍にイスラエルは2.8倍、マレーシアは2.4倍、スイスは2.2倍、サウジアラビアは2.2倍、フランスは2倍にといった具合です。世界中万遍なく日本株を買いに来ているのです。世界にはまだまだ日本株を買えないで買いたいと思っている投資家が山のように存在しているのです。そして世界最大の投資ファンド、ブラックロックは日本の主要株を大量に買い始めました、三菱UFJFG、三井住友FG、みずほFG、日本取引所グループ、ファナック、電源開発、JXHD、東京製鉄、九州電力、ダイキン工業、東芝、東京エレクロトン、商船三井、中部電力、セコム、これら全ての株式の5%以上の大量保有者となってきました。

 債券から株へという歴史的な資金の流れは止めようがありません。日本企業の収益は二桁増益が続きます、政治的には安倍政権がかつてないほどの長期政権となっています、日本企業はコーポレートガバナンス・コードの施行でやっと世界標準に近づいてきたという背景もあります。更に日本株には日銀の買い付けや年金基金の継続的な買い付けも期待できるという世界で最も魅力的なマーケットが日本市場なのです。外国人投資家が買わないわけがありません、外国人投資家は日本人が弱気なうちに全ての売りものを拾って大きな上昇相場に備えていこうという算段です。日本株の相場はまだまだ始まったばかりです、驚くような大相場が待ち構えているのです。