<保管していたビットコインがなくなってしまった、本当に申し訳ない>2014年2月28日、当時ビットコインの最大の取引所であったマウントゴックスのマルク・カルプレス社長は東京地裁に民事再生法を申請したのです。当時喪失したと言われた金額は顧客保有分75万ビットコインと自社保有分10万ビットコイン、総額にして114億円程度でした。マウントゴックスの顧客12万7000人のうち、日本人は0.8%、約1000人に過ぎなかったのです。当時も一時1000ドル台に達していたビットコインは100ドル台に暴落したのでした。<やっぱりか>当時も多くの人はビットコインの危うさを感じていましたので、事件の発生とビットコインの暴落を当然の帰結と思っていたことでしょう。当時から将来的な仮想通貨の需要拡大ということは予想されていました。ただビットコインも当時は出始めで怪しげな体制とセキュリティーに対しての信頼感もなく、ビットコインなどの仮想通貨ブームも一時的なブームに終わるだろうという見方が強かったと思います。

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ビットコインの時価総額はついにトヨタの時価総額を大幅に上回り34兆円という巨額

 ところが今や、そのビットコインは急成長、大膨張を続けて連日のニュースとなっています。12月10日、ついにシカゴの先物取引所に上場したビットコインの先物は、価格が2割も上昇して初日の取引を終えたのです。ビットコイン先物の1月物の価格は1ビットコインあたり18545ドルとなりました。取引時間中は相変わらず値動きが激しくサーキットブレーカーによる売買の一時停止(10%動いた時点で数分の売買停止が取られる)は複数回に及びました。初日の取引を順調に上昇して終わったビットコインの時価総額はついにトヨタの時価総額を大幅に上回り34兆円という巨額に及んできたのです。

2014年にわずか114億円の資産喪失で倒産したということが信じられない展開です。そしてマウントゴックス倒産時には、日本の投資家はわずか1000人にしか過ぎなかったのに、現在ではその1000倍の100万人がビットコイン取引を行っているというのですから日本での大人気、そして上昇ぶりには驚きの連続です。ビットコインの大手取引所のビットフライヤーの利用者数は2017年には前年比で2.5倍に増加中、その6割が30代以下ということです。そしてビットコインの取引の主役は今や完全に日本人です。10月のビットコインの円取引のシェアは42%と米ドルでのシェア36%を凌いでいるのです。2014年、マウントゴックス倒産時にビットコインを購入していれば価格は200倍に化けています。2017年だけでも20倍に化けたという驚くべき上昇です。当然、日本各地で<億り人>と言われるビットコインで1億円以上稼いだビットコイン長者が多数生まれてきているのです。

 何故ビットコインはこれほど上がるのか? 今後暴落はあるのか? 投資妙味はどこにあるのか? そして税金はどうなのか? 

 ここまでの激しい上がり方をみるとビットコインの相場がバブル化していることは疑いないでしょう。ところがビットコインの相場はバブルと言われるたびに上げてきたことも事実です。JPモルガンのダイモンCEOは<ビットコインは詐欺、17世紀のチューリップバブルより酷い>とこけおろして<仮にJPモルガンのトレーダーが取引を始めたら即座に解雇する>とまで言いました。このようなビットコインの相場に否定的な意見はダイモン氏だけでなく金融界の一般的な見方です。またグリーンスパン元FRB議長はビットコインの急騰について<人間は価値のないものでも買う>として<元々無価値なものであっても、人々が転売可能と信じれば新たに価値を持ち交換が始まる>と解説しています。いわばビットコインの相場は<ねずみ講>のようなものと言いたいようです。12月13日のFOMC後の記者会見ではイエレン議長にビットコインに対しての質問が相次ぎました。イエレン議長はビットコインについて<決済システムでの役割は非常に小さく、安定した価値の保存手段でも法的通貨でもない。非常に投機的な資産だ>としたものの<ビットコインの価格が下落したら大損をする人は出るかもしれないが、金融システムを損なう本格的なリスクを生み出すとはみていない>と述べています。いわばビットコインに投資している人は鉄火場と割り切っているだろうし、まともな銀行や機関が大きな勝負をしていることはあり得ないだろうからビットコインの大暴落があっても金融システムに影響が及ぶことはない、と考えているようです。この考えは現在の世界の金融関係者や規制当局や市場関係者も共有しているように思います。

国際的な決済や送金も仮想通貨を使えば簡単に安く

 ビットコインが人気化した背景として、将来のデジタル通貨への期待感があることは事実でしょう。現金を持ち歩くのは重いし危険ですし、かさばります。クレジットカードは便利ですが、手数料が高く4%近いので加盟店の負担が大きいわけです。仮想通貨の決済であれば決済手数料が各段に安く、使用者、加盟店にとっても便利です。時代は国際化していますし、国際的な決済や送金も仮想通貨を使えば簡単に安くできます。

 現在では外国に行き、エアビアンドビーを利用したり、ウーバーを利用したり、広範囲にサービスを利用する可能性も高く、それらを仮想通貨で決済できれば、劇的に安くなるわけです。時代の発展や流れを考えれば、現在の現金使用の決済システムから仮想通貨など便利な決済を多用するようになることは疑いないでしょう。この将来の圧倒的な需要を考えれば、将来仮想通貨が世界中で一般的な取引手法となることは必至です。

 時代がそのような発展段階にあることは事実で、仮想通貨の爆発的な需要が迫っていることは間違いないとしても、現在のビットコインをはじめとする人気の仮想通貨の実体は、一般的に求められている決済機能を重視する仮想通貨の形とは全く異なったものになっています。値段が激しく動き過ぎるわけです。価値がかように短時間で極端に変化するようでは、通貨として決済機能を持たせるのは大変なことです。余りにビットコインが人気化しすぎてしまって、現在のビットコインは通貨として最も重要な要素である決済機能を失っています。ただ上がるから、儲かるから購入するという投機対象になっています。投機であればバブル化してもいずれ暴落の憂き目にあうと分析されるのは当たり前でしょう。

 しかしながら現実に日本人、しかも30歳代以下の若い人たちがこの相場をけん引して、これだけのブームが起こってしまい、しかもビットコインの総額が30兆円を超えるような実体となっては、ビットコイン長者が実質続出しているような状態になりつつあるわけで、この現実と相場のからくり、ないしは先行きの展開ももう少し詳細に分析する必要があると思います。単にバブルというには30兆円という額は常軌を逸していますし、このままいけば金額の膨大さが影響を各所に与え、社会を変えてしまう可能性も否定できません。

 まず何故、これほどまでに上昇するのか? という事ですが、これはビットコインなど仮想通貨の持つ特性に深く関連しているように思います。物の値段は基本的に需要と供給の関係で決まっていきます。現在の日米欧などの通貨当局である、FRB、ECB、日銀などはここ数年、リーマンショックの後、膨大な資金供給を行ってきました。通貨供給量は爆発的に増えたわけです。それがほとんど日本などでは日銀の当座預金に眠っているものの、その供給された額は膨大で現在も増え続けているわけです。いわば日米欧だけでなく、信頼が置かれている世界の各中央銀行の発券する紙幣はその供給が減ることなく増え続けていて、今も増え続けているわけです。ところがビットコインは供給を増やすのが難しく、一定の供給量しかないわけです。ビットコインは発行量が2100万枚と決められています、その2100万枚が2141年までに全てが発行され尽くすことも決まっています。2017年1月時点で1600万枚以上が発行されていますが、後120年経過しても発行量は3割程度しか増えないのです、かようにビットコインは今後無尽蔵に発行され続けることはないわけです。そこに日本の例をみるように、2014年には1000人しかいなかったビットコインに投資する投資家が1000倍の100万人にまで膨張してきたわけです。これでは価格が暴騰しないわけがないでしょう。供給量は変わらないのに需要が爆発的に増えてきたわけです。

 マウンドゴックスが倒産した時点がビットコインに取って最も人気がなくなった時点でしょうからその時点の100ドル台が相場の底になっています。相場の格言で言うならまさに取引所が倒産したという<絶望>の状態からビットコインの大相場がスタートとなっています。その後ビットコインは主に中国で取引されていました。先日アフリカのジンバブエで政変が起こった時にビットコインが急騰したのですが、ジンバブエのような政情不安の国で自国の通貨が信用できない状況であれば、ネットで自由に購入できるビットコインのような仮想通貨は、自国の信用できない通貨の代替として恒常的に人気になるのも当然です。また一昨年はインドで突如、紙幣の流通が禁止され、紙幣が一瞬にして価値のないものにされてしまいました。このような時でもビットコインを保有していれば自らの財産を維持することが可能です。金購入も信用できない紙幣を代替する一つの有力な手段ですが、現物を買う手間や購入までの時間がかかります。デジタル通貨であるビットコインなど仮想通貨であれば簡単に資産を移行できるわけです。更に世界にはいわゆるブラックマネーと呼ばれる表に出すことのできない膨大な資金が眠っています。これらをマネーロンダリング、いわゆる裏金を表のお金に化けさせる手段としても利用されることもあるでしょう。

 こう考えると世界的に通用する仮想通貨であるビットコインが大きな人気があるのがわかります。しかしその人気ゆえに各国の中央銀行などの通貨当局や各国政府に嫌われ、規制され、政治的な圧力で価値を強制的に失わされる可能性もあるわけです。例えば、元々ビットコインは中国で大人気でした、中国の人々は自らの資金を海外に移すのが難しく、海外送金などの合法的な手段が限られているわけです。ところが中国経済の実体を知る多くの人たちは何としても自分たちの資産を海外に逃がしたいと思っているわけで、その一端としてビットコインが大人気となりました。2017年初頭、1月の時点ではビットコインの取引のシェアの93%は中国だったのです。ところが中国政府は人々の資産が中国からの逃避を目指してビットコイン流れることを警戒、徹底的に規制を強めました。2017年1月中旬、中国はビットコイン取引において、投下した金額以上に売り買いできるレバレッジを禁止しました。そしてそれでも取引が拡大、収まらないのをみて、9月には当局は強権を発動、中国におけるビットコインの取引所を閉鎖するに至ったわけです。ここで本来であれば、ビットコインが大暴落して相場は収束すると思うのが普通です。ところがその後もビットコインは上昇を続け、9月の時点からも数倍に化けたのですが、今度はその上げの原動力は日本の若い個人投資家だったというわけです。

 外からみて、今まで明らかになっている事実を追っていくとこのように中国での資金逃避という恒常的な人気から、次は日本に舞台を移して、日本の若い投資家を巻き込んで大相場に発展していったということになります。これはビットコインにおける中国での取引シェアと日本円での取引シェアの推移をみると明らかです。CryptoCompare.comによると2017年のビットコインの取引シェアの推移をみると、1月1日の段階では中国のシェアが93%、日本のシェアが5.0%に過ぎなかったのですが、9月1日の段階で、中国のシェアが13.2%まで下がり、日本のシェアが46.3%まで上がっています。そして11月1日になると、中国のシェアがゼロとなり、日本のシェアが61.8%まで上がっているのです。表面上はかように中国の投資家から日本の投資家へのバトンタッチが巧みに行われて相場が高騰し続けていることがわかります。

これだけの相場に発展するのは裏側での巧みな相場操縦があるはず

 しかしここでもう一つ、ビットコインの相場の裏側も想像しておく必要があるでしょう。余りに相場がきれいに上がり過ぎるからです。如何に日本の若い投資家が大挙してビットコインの相場に参入し続けたといっても、これだけの相場に発展するのは裏側での巧みな相場操縦があるはずです。先に書いたように日本でのビットコイン人気は爆発して2014年の1000人の投資家から2017年12月時点の100万人の投資家にまで発展してきたわけですから、相場を劇的に上昇させる客観的な状況は存在しているわけです。それでもこれだけ上げ続けたことを理解するには十分でないでしょう。これだけの大相場が実現できたのは、裏方の巧みな見えない相場操縦があったに違いありません。

 その原点はズバリ中国にあると思います。ないしはマウントゴックスが倒産した当時からビットコインを手掛けていたビットコインをよく知る大スポンサーたちの存在がカギを握っているでしょう。ブルームバーグによりますと、ビットコインの総発行量の約4割が1000人の大口保有者で保有されているというのです。彼らはビットコインが見向きもされなかった初期の頃から関わっていたため、お互いに知り合いも多く、相場の上げ下げで結託している可能性があるというのです。

 株式市場では株価操作などは禁止で、株価操作を行えば厳しい制裁を受け、収監されます。ところがビットコインはそのような法律体系は整っていません。何を行っても自由なのです。いわば大口投資家達が結束してビットコインの値段を巧みに操作していたとしても全く罪に問われることはないわけです。

 値段は需要と供給の関係で決まります。中央銀行が発券するドルやユーロや円は供給が増え続けていることは指摘しました。ところがビットコインは供給が限られています。しかもビットコインはその初期の頃から携わってきた連中がビットコインの持つ性質や内容、またブロックチェーンなどビットコインを支えるべき重要な技術の必要性を熟知しています。

ビットコインは一定期間ごとに、その取引を100%台帳に残して整合性を保たせます、銀行の支店は一日のお金の出入りを最終的にチェックするわけですが、お金の整合性を合わせるのは大変な作業です。それと同じでビットコインは膨大な取引が行われながら取引の整合性を計るわけですから気の遠くなるような作業です。当然整合性を計るには膨大なコンピューターによる計算が必要とされるわけです、それを行うのがマイニング業者と呼ばれる人たちで、いわばビットコインはマインング業者のたゆまない計算処理の下、成り立っているわけです。一方彼らはビットコインの取引内容のほとんどを知る存在でもあります。またマイニング業者はこの膨大に煩雑な作業の報酬としてビットコインを発券、もらうことができるというわけです。ビットコインの新たな供給を受けるのはこのマイニング業者だけに限られているのです。

こう見ていくと、ビットコインの取引においては、有力なマイニング業者、並びにビットコインの創成期から大口の保有をしている大スポンサーらが、結託して市場に流通するビットコインの量や市場の巧みな操作を行えば、価格を自由に操作することは可能に思えます。現在は、彼らが協力して極端に売り物を引っ込めて市場に出回る供給量を調整して、実質品薄状態を作り出して陰で相場を演出している可能性が高いでしょう。いわば大口の売りものを決して出さず、極端に品薄の状態を作り出して、適度な買い物や売り物を出しながら、価格の法外な高騰をたくらみ実現させているわけです。

 一見すると日本の投資家の買いで急騰しているので、日本の投資家が大儲けしているように見えますが、2017年1月の段階では中国でのシェアが93%であって、その後売り抜けた形跡もありません。日本人は体よく暴騰近い上げのための演出に使われて、しっかり膨大な含み益を有しているのは中国勢の方が大きいのではないでしょうか。大量にビットコインを持っているのは実は中国勢で日本の投資家は小口の投資家が怒涛のように買い続けて高値を演出しているだけという構図も考えられます。

 そもそも日本でマウントゴックスが営業していて、そして倒産したのも、今回、ビットコインの相場が日本で暴騰状態となっているのも偶然ではないでしょう。彼らにとって日本という舞台は仕事がやりやすいのだと思います。日本は規制当局の力が弱い、日本の当局が不正行為などに対して摘発能力を持っていない、コンピューター取引を使った株価操作などもヘッジファンドにとって日本ではやり放題ですが、そのような日本の甘い管理体制を狙われて、ビットコインの相場演出において価格操作を目いっぱい行っているように思えます。日本の当局はなめられていて、いわばビットコインの暴騰を演出している輩とっては天国のようなところなのかもしれません。

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